東電の柏崎刈羽原発の検査は不十分です
2003年7月10日更新
1.東電が東北電力や中部電力より重要配管を点検しないのはおかしい
東北電力・女川原発や中部電力・浜岡原発は、東電と同じく再循環系配管にひび割れがあります。東電は過去5年間に点検した箇所は、今回点検しようとしませんが、女川や浜岡原発の多くは、配管の全溶接線を既に検査しているのです。不祥事を起こした東電が一番甘い検査なのですが、ひび割れのある割合は柏崎刈羽原発が一番大きいのです。
2.国の指示で女川原発は再循環系配管の全溶接線の検査を実施する
6月24日、東北電力は女川原発2号機の再循環系配管の検査で、ひび割れの兆候が6月23日に発見されたと公表。東北電力はその部位の配管を交換し、過去5年間に点検した箇所を含む、配管の全溶接線(継手部)を点検することにしました。
この件で27日、東北電力本店・広報に電話して以下の事を確認しました。「今回の問題部位は第2回定期点検時(平成10年1月〜4月)に検査した箇所。全溶接線を点検することにしたのは、保安院4月17日の指示文書に従った判断。」との事でした。
確かに、保安院の指示文書の「A点検の頻度(5頁)」によると、「配管溶接線を5年で100%点検し、ひび割れがあった場合は、予定点検箇所数と同数を追加点検する。」とあります。
(保安院指示文書http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003950/ )
東北電力は今回全溶接線76箇所の内、保安院の指示文書の基準(5年以内に点検した箇所等を除いて点検)に従い、39箇所の点検を予定していました。その同数の39箇所追加で78箇所ですが、全部でも76箇所なので結果全溶接線検査となったという訳です。
この保安院の指示に従えば、ひび割れの見つかっている柏崎刈羽原発でも、今回の点検箇所数と同数を追加点検することが必要ですが、実際には行なわれていないのです。
3.柏崎刈羽原発の再循環系配管は未点検箇所が多い
東京電力は過去5年以内に点検した部位や、応力緩和措置を施した部位などを、今回の総点検で検査していません。再循環系配管の未点検箇所数は下記の一覧にあるように、柏崎刈羽原発では、1号機・27箇所、2号機・50箇所、3号機・31箇所、4号機・10箇所、5号機・14箇所の計132箇所です。全溶接線の数は357ありますから、約4割の箇所が未点検です(※全溶接線の数はひび割れ部分の配管交換により今後増加します)。
この132箇所を確実な点検方法で検査せずに、運転再開することは危険であり許されません。これだけの未点検総数から考えると、ひび割れ(兆候)が存在する可能性があります。特に、4号機は格納容器の漏えい率検査が終了し、7月1日に起動前試験が終了予定と、運転再開への強引な動きが急ですが、まだ10箇所の未点検箇所が残っています。
○ 柏崎刈羽原発の「再循環系配管(溶接継手部)」の点検状況一覧(第8回健全性評価小委員会資料より)
号機
A;今回未点検数(*)
B;今回点検数
C;総数(A+B)
D;損傷数
損傷率(D/B)
1
27(10+ 5+10+ 9- 7)
45
72
(4)26
(異常)57.7%
2
50( 6+18+22+ 7- 3)
16
66
(2)3
(多い)18.8%
3
31( 3+13+10+10- 5)
31
62
2
6.5%
4
10( 1+ 4+ 2+ 3)
68
78
6
8.8%
5
14( 5+ 0+ 5+ 4)
65
79
9
13.8%
合計
132(25+40+49+33-15)
225
357
(6)46
20.4%
* ( )内の数字は、過去5年間・4回の定期点検時の各点検数、左側が一番前で右側は今回も調べた数
ちなみに、これまでに発見された損傷箇所の総数は46(26+3+2+6+9)、今回の点検総数の225と比べての損傷率は約2割です。ただし、1号機の損傷率は約6割と異常に高いのですが原因は解明されていません。この損傷率が高い原因としては「国の定期検査ではひび割れの有無が分からない」のか、「ひび割れはあったが不正操作などで隠ぺいされた」と考えられますが、どちらの場合でも大問題に違いありません。
なお、損傷数の表記で( )に入った数字は、実は過去の点検でひび割れが確認されていたが、最近まで公表されなかった箇所の数で、計6箇所のひび割れが隠ぺいされていました。
そして、再循環系配管には大きく3種類の太さの配管があり、当然太い(直径約60cm)配管に問題があればより重大な危険性があります。特に、原子炉圧力容器から再循環ポンプまでの太い配管の内、ポンプの前にあるバルブより原子炉よりの部分に問題があると深刻です。なぜならば、この範囲で破断して冷却水が漏れ出すと止めようが無いからです。
4.再循環系配管より重要なノズル部*にも未点検箇所がある(*下図を参照)
ノズル部とは再循環系配管と原子炉圧力容器が接続する部分のことで、構造上非常に負担のかかる脆弱な部位で、破断すれば冷却水が漏れ易く漏出を止めらません。今問題になっているステンレス材(低炭素材)のひび割れが、最初に問題となったのは米国原発のノズル部でした。ノズル部の点検頻度は10年100%と、再循環系配管の10年25%の4倍で、この部位の健全性が再循環系配管より安全上重要と、国もみなしている訳です。
このノズル部の過去5年以前の点検部位の再検査は、当初予定にありませんでしたが、当地などの市民が総点検を強く要求した結果、東電は検査し福島第二原発1号機で問題が見つかり交換することになりました。10年で100%という点検頻度は間違いでした。
現在、再循環系配管の点検頻度は、過去の頻度の8倍に増やしていますが、再循環系配管以上に重要と思われるノズル部の点検頻度は、2倍になっただけです。
このノズル部の点検の重要性を以前から主張していた、原発に関する専門的知識を持つ方が、ノズル部は定期点検毎に全部検査する必要があると強調していました。確かに、重要性や実際にひびが見つかっていることから考えると、ノズル部は定期点検毎に全部検査する必要があると思います。しかし、柏崎刈羽原発のノズル部の27箇所45%が未点検です。
※東電の「炉心シュラウド及び原子炉再循環系配管等の点検計画書(5月16日、http://www.tepco.co.jp/cc/press/03051601-j.html )」によると、柏崎刈羽原発1〜5号機の5年以内に点検したノズル部は全部で27箇所。全数60箇所の45%が未点検。
なお、ノズル部には大きく分けて二種類あり、太い再循環系配管に接続している部位が各原発に2箇所、細い再循環系配管に接続している部位が各原発に通常10箇所あります。
当然、太い再循環系配管に接続しているノズル部が安全上重要で、柏崎刈羽原発1〜5号機全体で6箇所が未点検です。その内、早期運転再開が画策されている4号機に2箇所あります。細い方に接続するノズル部は全部で21箇所が未点検で、4号は4箇所です(4号の再循環系配管は10箇所未点検)。
東電の点検は不十分です。
5.柏崎刈羽原発以外のBWR原発の点検状況
さて、東電の柏崎刈羽原発以外の状況ですが、福島第一原発は全6基あり、1〜5号機は総計39箇所のひび割れのため、比較的最近配管全体をそっくり交換しました。その交換時に(6号機は建設時に)ひび割れ対策をしたとして、問題ないはずと今回まともに検査していませんが、その検査範囲ではひび割れは見つかっていません。勿論、ひび割れ対策部位を検査していないので、ひび割れ対策が効果あったかは未確認と言えます。
そして、福島第二原発の方は4基ありますが、下記一覧のひび割れが確認されました。
○ 福島第二原発の「再循環系配管(溶接継手部)」の点検状況一覧(第8回健全性評価小委員会資料より)
号機
A;未点検数(*)
B;今回点検数
C;総数(A+B)
D;損傷数
損傷率(D/B)
1
0
8
8
1
12.5%
2
10( 0+ 5+ 0+ 5)
(予定)93
103
1
1.1%
3
22(12+ 2+ 4+13- 9)
41
63
(7)9
(多い)21.9%
4
13( 5+ 3+ 2+ 3)
73
86
10
13.7%
合計
45(17+10+ 6+21- 9)
215
260
(7)21
9.8%
* ( )内の数字は、過去5年間・4回の定期点検時の各点検数、左側が一番前で右側が今回も調べた数
なお、2号機は点検終了前の損傷数です(5月23日時点)。損傷数の( )内の数字は過去の点検でひび割れが確認されたが、最近までその事実が隠されていた箇所の数です。
次に、東北電力の女川原発の状況ですが、3基あり1号機は全数64箇所を全部調べました (国の指示による)。損傷数は10箇所で損傷率は15.6%です。内4箇所は過去の点検で確認されていましたが、最近までひび割れの存在が隠ぺいされていました。2号機は総数76箇所の内2箇所点検したところで、今回のひび割れの兆候が発見されました(残り全部の箇所を調べる予定)。3号機は昨年動かしたばかりの新設炉で現在運転中です。
最後に、中部電力・浜岡原発ですが、全部で4基あり2号機が運転中です(1基増設中)。1・3・4号機の点検状況は以下のものですが、全溶接線が検査済みで損傷率は10.5%です。全溶接線の検査は中部電力の判断で2月末頃に決めました(6月30日中電に電話で確認)。
○ 中部電力浜岡原発の「再循環系配管(溶接継手部)」の点検状況一覧(第8回健全性評価小委員会資料より)
号機
A;未点検数
B;今回点検数
C;総数(A+B)
D;損傷数
損傷率(D/B)
1
0
72
72
2
2.8%
2
運転中
3
0
66
66
(7)13
(多い)19.7%
4
0
62
62
6
9.7%
合計
0
200
200
21
10.5%
* 損傷数の( )内の数は過去に発見されていたが、最近まで隠ぺいされていたひび割れの箇所数
以上、ひび割れの確認されているBWR原発の内、東京電力以外は基本的に配管の全溶接線を検査しています。未点検の部位が残っていますが、福島二の3号機の21.9%と浜岡3号機の損傷率19.7%などが悪い方で、柏崎刈羽1号の約 6割の損傷率は異常な多さです。
また、女川や浜岡原発は配管の全溶接線を検査していますが、シュラウドについてはひび割れを放置したままの、危険な運転を画策しているために別の面で問題があります。
ノズル部の点検状況
【東電の「炉心シュラウド及び原子炉再循環系配管等の点検計画書(5月16日、http://www.tepco.co.jp/cc/press/03051601-j.html )」によると、柏崎刈羽原発1〜5号機の5年以内に点検したノズル部は全部で27箇所と、全数60箇所の45%と大半が未点検です。
又、福島第一原発1〜6号機の方は、全部で最低33の未点検箇所があり(4・6号機の数は未確認)、福島第二原発1〜4号機は全部で48箇所の内、20箇所(全数の4割強)が未点検です。
そして、浜岡原発1・3・4号機は全部で34箇所を点検済み( 6月30日中電に確認、2号機は運転中)。女川原発については確認中です。】
なお、ノズル部には大きく分けて二種類あり、太い再循環系配管に接続している部位が各原発に2箇所、細い再循環系配管に接続している部位が各原発に通常10箇所あります。
当然、太い再循環系配管に接続しているノズル部が安全上重要で、柏崎刈羽原発1〜5号機全体で6箇所が未点検です。その内、早期運転再開が画策されている4号機に2箇所あります。細い方に接続するノズル部は全部で21箇所が未点検で、4号は4箇所です(4号の再循環系配管は10箇所未点検)。
福島原発全体では未確認の2基を除いて、太いノズル部が9箇所、細い方は44箇所が未点検です。女川原発の状況は確認中です。
6.他にもある未点検の問題箇所
原子炉のシュラウドもひび割れが問題になっていますが、多くのBWR原発でひび割れが見つかっています。そして、実はこのシュラウドは検査出来ない範囲の割合が多く、全体の約半分も機器類がじゃまで検査していないのです(ただし、柏崎刈羽原発6・7号機は点検可能範囲が一般のBWR原発よりは広い)。
こうした検査できない範囲についての状態は、検査可能な範囲の状態と同じ様だろうと、単純に考えて強度計算をして安全と言われても、危険で信用するわけにはいきません。多分に検査可能な場所と不可能な場所では、冷却水の中に溶けている酸素(溶存酸素)の、濃度が違うと考えられるからです。溶存酸素は応力腐食割れのひび割れを作る原因の一つとされ、酸素は中性子の照射により水が水素と酸素に分解されて作られます。この水素と酸素は複雑な化学反応を経て、やがて元の水に戻りますが、原子炉内の溶存酸素濃度の分布状況は、大変に複雑で計算不可能と聞きます。こうした溶存酸素の濃度が点検不可能な場所で高ければ、ひび割れが発生し易かったり進展し易かったりすると考えられます。
更に、問題の低炭素ステンレス材を使った部位はほかにも、BWR原発で多くの場所に点在しますが、どの原発でもほとんど点検されていないようです。しかし、それらの部位は応力腐食割れを起こされたくない重要性があるが、応力腐食割れの生じる可能性のある部位です。例えば、安全上重要なノズル部にしても、再循環系配管と原子炉容器との接続部以外に、多くのノズル部がありますが未点検部位が多くあります。一番心配される地震での被害などの場合には、安全上比較的重要性が低い部位でも、同時に多くの場所が破断などの問題を起こせば、想定を超える大事故に発展する危険性があります。
7.ねつ造事件の問題があった部位も未点検
特殊ステンレス材以外は、97年の日立エンジニアリングサービスと叶L光による、焼鈍データのねつ造事件関係の部位が未点検です。焼鈍とは配管溶接時に残る(残留)応力を緩和する作業で、焼きなましとも言いますが電気で熱を配管に加える作業のことです。
この電気による加熱の状態に関するデータが焼鈍データですが、このデータは応力を緩和するために必要な熱処理が、適切に行われたかを確認するために不可欠です。しかし、実際の現場でデータを取ると、理想的なデータが取りにくく不合格になる場合があります。そこで、実際の配管を模擬した偽物で理想的なデータを取って、国の検査をごまかして合格していたという不正行為が行われたのです(この事件も内部告発で発覚)。
この事件は、一応国がデータをねつ造された部位を97年に全部調べ、適切な焼きなましが行われていて問題はないと片付けられました。焼きなましが適切に行われていたのならば、その部位の配管に残っているであろう、微妙な痕跡を確認して大丈夫と判断したのでした。しかし、昨年発覚した東電事件での東電や国の体質や能力を考えると、この時の確認だけは正直にデータをねつ造せずに、十分適切に行ったのか疑問です。実際は問題のある溶接部位が存在する恐れがあります。
データねつ造された建設時と補修時の疑義部位の数は、全国の原発で以下の状況です。
東電福島第一4号機(補修時)
7
中部電力浜岡2号機(補修時)
2
福島第二2号機(建設時)
12
3号機(建設時)
8
4号機(建設時)
34
4号機(建設時)
19
柏崎刈羽4号機(建設時)
18
中国電力島根1号機(補修時)
12
5号機(建設時)
37
2号機(建設時)
36
6号機(建設時)
38
北陸電力志賀1号機(建設時)
9
東海第2(補修時)
5
日本原子力発電敦賀1号機(補修時)
11
建設時の合計が211箇所、補修時の合計が37箇所と、総計248箇所もあります。