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T はじめに ― プルサーマルをめぐる状況

プルサーマルというものは

 原子力発電所(軽水炉)で使う燃料はウラン燃料です。ウランは中性子と熱を出しながら核分裂して、別の放射性元素(放射能)になります。また、一部のウラン238は中性子を吸収してプルトニウムになります。プルトニウムはウランよりも毒性や爆発性が強く、原子力爆弾の原料になるため、国際原子力機関(IAEA)が厳しく管理するよう指示しています。

 これまで、原発の使用済み燃料から、再処理によってプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で使うという青写真が描かれていましたが、再処理工場や高速増殖炉“もんじゅ“の相次ぐ事故で、それがほぼ不可能になりました。そこで、プルトニウムを海外の工場で再処理し、ウランと混ぜてMOX燃料にして再度、軽水炉で使うという「プルサーマル計画」が浮上、1997年に発表されました。

 プルサーマルでは使用済み燃料から取り出したプルトニウムをウランと混ぜ、焼き固めて小さいペレットを作ります。そのペレットを4mほどのジルコニウム製の管(さや)に詰めて燃料棒にします。燃料棒は並べられて燃料集合体となり、これを軽水炉に入れて発電しようというのです。

イラスト(爆発) 復習 〜〜〜 プルサーマルの危険性

 そもそも軽水炉はMOXを使うために設計されたものではありません。そのため、軽水炉でのMOX燃料使用はいくつかの点で運転管理が難しくなります。

 これらは電力会社も認めている科学的事実です。

 後ほどペレットの大きさについの疑惑について述べますが、その大きさが規定外だと熱がこもったり、不均一になったりして、炉心溶融につながる可能性が高くなり非常に危険です。燃料ペレットとさや管との隙間は非常に高精度に管理しなければならないのです。 私たちが、1000分の1mm単位の小さな数値にこだわるのは、疑惑解明に必要だということと共に、このような危険性があるためなのです。

MOX燃料で重大事故が起きると?・・・欧米では原子力からの撤退が始まっている

 MOXの事故では大量のプルトニウムがばら撒かれますので、ウラン燃料の時に比べて、大きな被害が出ます。チェルノブイリのようなウラン事故に比べ、汚染範囲は4倍にもなり、日本のような小さな国では、全滅といえるような壊滅的な事態になってしまいます。

 MOX使用は危険が大きいわりに膨大なコストがかかって採算がとれません。また、使用済み燃料からプルトニウムを取り出すという危険で、放射能汚染という意味で汚い作業を必要とします。欧米諸国は使用済燃料の再処理を止める方向に転換しています。

 原発もドイツ、スウェーデンなどは、全廃を決定。日本以外の先進国は新規予定なしの状態です。いまや、プルサーマルにこだわっているのは日本だけといっても過言ではありません。

イラスト(実験) MOXの製造はその性質ゆえに難しい

プルトニウム加工では、水が使えない―――少量で臨界爆発に

 さて、ここからようやく本題です。まず、軽水炉にとって設計の想定外にあったプルサーマルですので、運転していくためには、MOX燃料にはウランより厳密な精度が要求されます。ところがMOX燃料の製造は非常に難しいと言われています。

 MOX燃料製造では水を使うことができません。プルトニウムは水があるとより少量で臨界に達して、核爆発を起こしてしまうからです。MOXのペレットは、粉状のウランとプルトニウムを混ぜて固め、水なしで研磨して大きさを揃えます。このため、製造が難しく、どうしても多くの不良品が出てしまいます。一方で、MOXペレットの大きさの異常は燃料棒破損や炉心溶融につながるものですから、厳密に規格外ペレットは使えません。

粉を加工するので均質に出来ない 製品の均質性を保証する検査は形だけ

 もうひとつ科学者が指摘する点は、粉末でのプルトニウムとウランの混合技術が難しいため、ペレット内に不均一にプルトニウムの“ダマ”が出来てしまいます。これは、熱の不均一化などの点で運転上危険ですが、問題なのはこの検査がほとんど実施できないということなのです。

 最終的に、利益を考えれば厳密な品質管理をやっていたのでは、不合格品があまりにも多くなってしまうということなのです。今回明らかになったデータのねつ造は、偶然ではなく、MOXの性質上そうせざるを得なかったという面があるのではないでしょうか。

資料を提出してねつ造が発覚した関電←この違いは何か⇒公開しない東京電力

 関西電力はBNFL社が作ったMOXの検査データを完全公開し、これにより、不正が明らかになってMOXの使用をあきらめました。一方、東京電力はベルゴニュークリア社が作ったMOXの検査データの完全公開を拒否し続けています。データのねつ造、あるいは不良品の混入を隠そうとしていると疑われています。何度も言うように、やましい所がないのならば、積極的に公開すべきなのです。

イラスト(STOP)世界は脱原発に向かっている  プルサーマルは沈没寸前、中止させることは十分に可能です

 原発先進地のアメリカでは原発を増設していません。プルトニウムを取り出す再処理もやめました。ヨーロッパでも多くの国が原発政策にブレーキをかけています。原発事故の心配だけでなく、放射性廃棄物の処理の見通しが立たない中で、各国は原発依存のない社会を目指しています。そのことを知らないのは日本人だけかもしれません。

低コスト、低公害の本命――燃料電池が実用化されつつあります

 この動きを加速しているのが、各種の新エネルギーです。原子力発電よりも安く、環境にやさしく発電できる方法が開発され、現実のものとなりつつあります。太陽光発電・風力発電・バイオマスも大切ですが、ここにきて、マイクロガスタービンや燃料電池が注目されています。特に、現在の電気よりはるかに低コストの燃料電池は新エネルギーの本命として自動車、家庭、工場で使えるものが、もうすぐ一般に売り出される所まできています。トヨタ、東芝などの大企業がこれらの新エネルギーに積極的に取り組んでおり、実は電力会社自身が原子力の未来に(経済的な意味で)不安を持ち、天然ガス売買に参入するなどしてマイクロガスタービンや燃料電池の普及、電力自由化に備えているのです。

一見原発一辺倒のように見える通産省でも一部ではこの分野への関与を深めています。

イラスト(風力発電)時代はプルサーマルを受け入れない

 繰り返しになりますが、私たちは、燃料電池をはじめとする新エネルギーの普及により、原発のたそがれの時代がすぐそこまできていることを自信を持って宣言することが出来ます。それは、4年後といわれている燃料電池自動車の発売をきっかけに、誰の目にも見えるようになり、10年のレベルで社会の主流となるでしょう。

 世界が脱原発に向かっている時代です。プルサーマルを推進する正当な理由は、もはやどこにもありません。危険で放射能汚染をもたらす再処理をやめて、原発を終焉させるのが時代の流れなのです。


U MOX燃料データねつ造疑惑の経過