東電と保安院の罪


 7月1日、柏崎原発反対地元三団体とプルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワークは、緊急声明「東京電力の再循環系配管検査は、電気事業法・保安院通達・供用期間中検査に違反している(末尾に転載)」を記者発表しました。この件につきその後の経過などを報告致します。

0.非常に重要な事実が昨日分かりました。

 女川1号機の再循環系配管の溶接線は全部点検していますが、10箇所あるひび割れの内1箇所(深さ2〜3o)は、前回の点検で「異常なし」だったことが、昨日東北電力に確認して分かりました。東電は過去5年以内に点検した箇所は検査しませんが、そこを検査したらひび割れがある可能性が高いと思われます。

1.東電や国の言い分

○昨夜7月1日の東電の西山町住民説明会にて

東電が過去5年以内に点検した箇所を除いた全部の点検箇所において、多くのひび割れが発見されならが、追加の検査をしないでいることが、参加者から質問されました。

西山町の人が女川原発2号機では点検予定範囲にひび割れの兆候が見つかった後、全溶接箇所を点検することとしたことを受けて、東電の対応は慎重さに欠けると批判しました。更に、東電の対応が検査違反であることを突きとめた、緑と反プルサーマル新潟県連絡会等所属の金子氏が、検査違反であることを説明して質問しました。

それらの質問への東電(主に山下氏)の回答ですが、「女川と東電では事情が違う、個々の原発で別の対応で良い。あの検査制度(社団法人日本電気協会電気技術規定「軽水型原子力発電所用機器の共用期間中検査」JEAC4205-2000)は、(重要なものではない)内規に過ぎない。適当に東電側の判断で検査して良い。5年間に100%点検すれば良い(ひび割れがあっても)。追加点検は(同時期に)必要ない、次の点検でどうせやるのだ。今の点検範囲で国も良いと言っている(その範囲でひび割れが見つかった場合は?)。」といった趣旨のものだったと記憶しています。

○本日7月2日新潟日報24面より

『(当方の緊急声明に対して)国は「東電は指示を満たしている」と反論している。保安院原子力発電検査課は「東電は今回の点検で5年以内で全溶接線を点検した。追加すれば全溶接線の数を超えるため、これ以上の対応は必要ない」と説明している。』との記事が載りました。

7月2日地域の会での説明

 4号機が再循環系配管の溶接線を全箇所点検していないことが、何人かが取り上げかなり議論になりました。しかし、東電・保安院とも「5年以内ならひびがあっても安全性に問題なし。東電は今回を含め過去5年間の点検で、全箇所検査したのでこれ以上の検査は必要ない。」といった趣旨の回答でした。

2.東電は追加点検すべき状態であることを3月10日に保安院は明確に求めていた!

 さて、検査は本来どうあるべきで、東電や国の言い分は正しいのでしょうか?

○原子力発電設備の健全性評価について−中間とりまとめ−原子力安全・保安院(3月10日)

http://www.nisa.meti.go.jp/00000004/04a00000.htm 原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会(第7回)配付資料より

これは、今年3月10日に原子力安全・保安院が公表したもので、昨年来のシュラウドや再循環系配管にひび割れ続出の事態を受けての、専門家等による検討結果のとりまとめですが、44頁〜「(2)点検に関する考え方」によると、今の東電や保安院の対応が明らかにおかしいことが分かります。

45頁「A原子炉再循環系配管」の記述ですが、「現在、原子炉再循環系配管の共用期間中検査頻度は、全溶接箇所数の25%について10年の検査間隔内で検査プログラムに従って実施することとなっており、検査の結果、規定に適合しない欠陥又は特異な状態を検出した場合には、その検査期間中に当該箇所又は部位と材料及び使用条件が類似な部位に対して検査を拡大することが要求されている。」とあります。これは正しくJEAC4205-2000の規定通りの内容で、JEACを軽く見て勝手に運用して良いといった東電の認識や説明がおかしいことが分かります。定期点検は電気事業法で実施することとなっており、具体的にはJEACの規定に従うことに他ならないのです。問題があった場合その「検査期間中に追加検査」するのであり、次の検査で見れば良いなどと言った東電は住民を欺いたことになります。

更に、次の段落は「今回、原子炉再循環系配管の各部において応力腐食割れによるひび割れが確認されたことから、当面、事業者において点検頻度を高めることとするが、点検頻度を設定するに当たっては、以下の事項を考慮することが重要である。」と続きます。つまり、今回の見直しは主に「点検頻度」にあることが明記されています。

そして具体的には47頁「まとめ」に「今回のひび割れに対する当面の点検頻度として、運転開始時期が短いプラント又は新しい配管に取替えたプラントを除き5年間の運転期間の間に全ての溶接継手(4回の定期点検において100%の点検を行うことを意味する。)を点検することとすれば、ひび割れの影響が顕在化する前に対処可能であると考える。」とあります(これが彼等の盛んに言う5年100%の根拠です)。

では、この点検頻度で何か問題が見つかった場合はどうするのか、それが問題です。先ほどの「まとめ」はこう続きます。「なお、点検した範囲内でひび割れが認められた場合には、点検割合を増やして点検を行うものとする。」とあるのです。つまり、追加点検です。

4月17日に保安院が出した指示文書より

この指示文書は「炉心シュラウド及び原子炉再循環系配管等のひび割れに関する点検について http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003950/ 」というもので、これにも、前述の中間とりまとめを踏まえて「5年100%」の点検頻度に変更することが関係6社に指示されています。昨年来の事件を受けて国が対応を変えたのは主にこの「点検頻度」なのです。応力腐食割れ対策をした箇所の点検も除外していますが、基本的に点検頻度を増やす以外には検査の方法は変えていません。もっとも、点検頻度を決めるためにも、可能な限りの知見を集める必要があり、問題のSUS316系材部分の徹底検査が必要です。しかし、今はまだひび割れの原因も究明中の段階ですから、点検頻度を決めることには無理があります。そもそも、「5年100%の点検頻度」が信用ならないということです(ほかにも、配管にひび割れがあった場合の、耐震評価の方法が問題で信用できない等、多くの問題があります)。

そして、この指示文書の「A点検の頻度」にも、「点検においてひび割れが認められた場合は、当該定期検査期間中に予定した点検箇所数と同数について追加点検を行う等、JEAC4205-2000の考え方に沿って追加点検を行うこと。」と明記されています。

やはり、「基本はJEAC」で問題あれば追加点検なのです。「問題があれば点検箇所を増やす」との考え方は、実は私が刈羽村説明会で東電に質問した時、女川原発2号機が追加点検した事にかかわって、東電自身が私に解説してくれたのでした。

3.東電は追加検査が必要、保安院は解体すべき

 以上、東電が説明し保安院が指示するように、ひび割れ続出の東電原発は、今回追加で検査する必要があるのです。実際に女川・浜岡で全数検査を実施し、浜岡ではノズル部分も全部検査した以上(女川2号も全部検査予定)、東電の姿勢は相変わらずの安全軽視であり、最近出した自らの指示を捻じ曲げてでも、東電をかばう保安院に安全規制の資格はありません。何しろ保安院の所属するのは経済産業省で、経済産業大臣としては一基でも原発を動かしたい、停電しても原発を動かさずに電気が足りても困る(原発が不用と言われるから)。東電原発の追加点検をすれば時間もかかるし、何かの問題が発見されれば夏には間に合いません。こうした事情が保安院のおかしな状況を招いているのだと思われます。安全規制に徹し全原発を平等に扱えない立場・状況なのです。

やはり今新潟県知事・柏崎市長が要求するように、保安院を解散し原子力の安全規制部門を経済産業省から分離・独立させるべきなのです。今回の件は具体的な保安院の問題であり、安全規制部門が独立していない問題でもあると思われます。

4.ひび割れがあっても5年以内なら問題ないのか?

 保安院や東電は5年以内なら大丈夫と言いますが、その根拠は中間とりまとめの末尾にある添付資料2「再循環系配管各部のき裂進展評価」の結果です。最初に2oの深さがあっても約8年経つまでは、問題となるひび割れ深さに達しないというもので、前提はひび割れの深さが2o以上なら、超音波探傷検査で検出可能というものです。

 こうした進展評価の手法や前提となる各種データが、本当に信頼に値するのか批判されていますが、一応この評価を妥当としても、2o以上のひび割れがあった場合は、8年経過する前に問題になります。ここで幾つか気になる問題事例があります。女川1号のあるひび割れでは、超音波探傷試験(UT)で2oの深さだったものが、実際に削って深さを調べると約12oでした(10mmのかい離)。ほかにUTで1oが実測で8.5oがあります(7.5oのかい離)。浜岡3号のあるひび割れの兆候が、UTで測定不可が実測したら7.5oという例もあります(7.5oのかい離)。

上記の国の評価では深さ約9oで問題となる配管もあり、9oに近い深さのひび割れ最初からあれば、数年内に問題になる深さに進展します。果たして2o以上の深さのひび割れを、これまでの検査で見逃していないか疑問です。ほかにも、過去の点検記録については検査体制や方法に問題があり、重要な前提として信用するのは危険です。

ひび割れの深さが正確に測定出来ない以上、全溶接線についてひび割れの有無を確認し、ひび割れのある配管は交換するべきです。5年以内の点検箇所を今検査しないで、運転再開することは危険だと思います。   以上


2003.7.1

緊急声明 東京電力の再循環系配管検査は、電気事業法・保安院通達・供用期間中検査に違反している

柏崎原発反対地元三団体・プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク

柏崎刈羽原発の再循環系配管とノズル部の点検箇所は当初計画に限定、過去5年間の点検箇所を除外している。
 柏崎刈羽原発の1〜5号機は、その全号機で、今回の停止検査で再循環系配管の損傷が確認されている。福島ではノズル部の損傷兆候が確認された。
 柏崎刈羽原発は今回の停止点検で、再循環系配管とノズル部の検査計画は過去5年間で点検しなかった溶接箇所として、1号機54ヶ所、2号機22ヶ所、3号機37ヶ所、4号機74ヶ所、5号機71ヶ所とした(6月4日−健全性小委資料等)。そして、点検の結果、1号機26ヶ所、2号機3ヶ所、3号機2ヶ所、4号機6ヶ所、5号機9ヶ所の損傷や損傷兆候を確認した。 (※ 上記点検箇所数は7月5日に訂正したもの)

東北電力・中部電力は、損傷確認で当初点検計画を変更し全溶接線の検査を実施している。
 東北電力・女川1号は、再循環系配管の損傷発見後、当初点検箇所を増やして、全溶接線を点検した。
 5月22日から定期点検中の同2号は、6月23日損傷を確認後、39ヶ所の点検計画を倍増し、結果として全溶接線を点検することを6月24日に発表した。
 中部電力浜岡原発の停止中の1号、3号、4号とも、損傷発見で当初計画を倍増して、結果として再循環系配管とノズルの全溶接線を点検している。
 しかし、柏崎刈羽原発の再循環系配管の点検箇所は当初計画通りで追加点検を計画していない。

 東京電力は、保安院通達を独善的に解釈し、損傷を確認しても同数追加の検査をしていない。
 4月17日に出された保安院指示文書(通達)には、過去5年の点検済を除く箇所の点検を計画・実施し、「点検においてひび割れが認められた場合は、当該点検期間中に予定した点検対象箇所数と同数について追加点検を行う」ことが指示されている。これは、社団法人日本電気協会電気技術規程「軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査」(JEAC4205-2000)に明記されていることでもある。
 東北電力・中部電力は、この規程に基づき、損傷確認後、点検箇所を倍増し、結果として全溶接線の点検を実施することになったのである。

 東京電力は4月17日の保安院通達、供用期間中検査に違反している。
 
東電は損傷を確認したにもかかわらず、追加検査を実施しないので、供用期間中検査に違反している。
 また、4月17日の保安院通達に違反している。

 原子力安全・保安院の無責任・無能さを示す事実である。
 原子力安全・保安院は、東京電力が、通達を無視したにもかかわらず、4号機の「安全宣言」を行った。 これは、原子力安全・保安院の正体−安全軽視・電力擁護を示す重大な事実である。
 経過は、原子力安全・保安院の存在意義を自ら否定することで、原子力規制行政の再構築の必要性を示す。

 新潟県・柏崎市・刈羽村に要求する。
 東京電力の供用期間中検査に違反は、専従スタッフを要する自治体として容易に気づくことだと考えられるが、今日まで指摘されていない。
 昨年の夏以降、自治体の対応変化の兆しを、単なる形式に終わらせてはならない。
 自治体は、東京電力や原子力安全・保安院の上記体質に対抗し、住民の安全・安心確保の側に立つことを求める。
 自治体として、東京電力に、電気技術規程「軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査」と保安院通達の遵守を求めなければならない。

 東京電力の安全軽視・嘘つき東電の体質を糾弾する。
 不正発覚後、「反省します、変わります」と宣伝している東電は、本質的には何も変わっていない。
 ビール券事件や6月28日の刈羽説明会で認めた「事業推進のためなら何でもやり、局地戦に勝利する」(01.7.13プルサーマル推進対策本部会議(第3回)議事録)との桝本副社長発言が如実に示している。
 この緊急声明で指摘する、「再循環系配管・ノズルの全数検査をしない」ことは、安全に密接に関連する事項である。


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