原子力関連基本データ集成
「原子力の虚像と実像」(3月8日講演資料)
藤田祐幸 2002年3月
基本概念
原子力をめぐる四つの迷信
- 原子力は経済的に有利である
- 原子力は石油代替エネルギーである
- 日本の電力の三分の一は原子力である
- 炭酸ガスを出さない原子力は地球を救う
世界がプルトニウムから撤退した三つの理由
- 技術的困難性 危険性が高すぎる
- 経済的困難性 経済的競争力が無い
- 社会的困難性 民主主義が崩壊する
炭酸ガスを出さない原発は地球を救うー詐欺師の方程式―
- 石 油 + 酸 素 = 電 力 + 炭酸ガス
- ウラン + 中性子 = 電 力 + 放射能
三つの放射能問題
- 巨大事故の問題
- 労働者被曝の問題
- 放射性廃棄物の問題
ボトムアップ作戦
1.三点セット
- 電気温水器
- 電気自動車
- エコアイス
2.揚水水力
※図や表の下に講演会での説明などから、市民ネットにより簡単な解説を試みました(注;講師によるとこれらの資料は、国の公開資料から作成されたものです)。

原発無くても大丈夫!(この図は集会後に講師より提供されました)
火力・水力・原子力の発電設備容量は、一番多く電気を使う時の最大電力より、十分な余裕を持っています。最大電力が必要となるのは夏場の昼間ごく短時間で、計画的に設備を点検したり準備すれば、その時に発電設備を最大限使えます。
原発の設備は黒の棒グラフですが、その分を無くしても最大電力に足りています。つまり、原発が無くても十分に電気を、一番必要な時でさえ供給できるのです。
そして後で説明しますように、発電事業への新規参入企業が多く、発電設備は余っているのです(火力発電所の長期停止や、建設の延期・中止が相次いでいます)。

原発を全部止めたらどうなるか?
黒色の棒グラフは原発の発電分ですが、99年の総発電量から原発分を引いてみます。すると、だいたい88年頃の総発電量と同じになります。
つまり、大雑把には今原発を全部止めても、88年に戻る程度で電気が止まる事はありません。実際は火力・水力の発電を増やして埋め合わせられます。電気の無かった江戸時代に戻るなどありえません。
次の図にありますように、水力や火力にはかなり余裕があるのです。

水力・火力はあまり発電させていない
赤色の棒グラフは発電できる容量の中で、実際に発電した割合で稼働率で表します。水力は再生可能な国産エネルギーですが、あまり発電させていません。火力も大きな設備容量がありますが、半分も運転させていません。一般の工場でこんなに低い稼働率だったら倒産です。
原子力は無理な定期点検の短縮や、問題があってもめったに停止させない事で、危険な程に発電させて稼働率を上げています。
電気の消費は昼間多く夜間少なくなります。季節によっても変動があり真夏がピークです。しかし、原発は「停止」か「運転」の2モードで、微妙な出力の調整は危険でできません。
それで原発はいたずらに増設する訳にはいかず、電気の使用が少ない時に合わせる必要があるのです。

年間最小電力に制約される原発
原発設備容量は折れ線で表されていますが、年間最小電力のちょうど少し少ない量です。原発設備が年間最小電力より多いと、無駄に休ませなければなりません。原発を作り過ぎないように計画的な建設が必要です。
しかし、原発の建設には時間がかかり、計画だけではこんなにうまく調整できません。原発の作り過ぎで夜間は電気が余っているのです。実はこの余った原発の電気をうまく「捨てて」、年間最小電力の制約と帳尻を合わせています。

揚水発電所という電気の捨て場
夜間余ってしまう原発の電気をどうするか?揚水発電所という電気の捨て場があります。揚水発電所とは二つのダムを持つ、電気で揚水する特殊な発電所です。夜間の余った電気で下のダムから、上のダムに水を汲み上げます。そして、昼間など電気を必要とする時に、上ダムの水を下のダムに放流し、短期間ですが発電が出来ます。
上のグラフにあるように揚水発電所は、かなりの設備容量を持ちますが、実際にはほとんど発電せずに放流され、ほんのわずかしか発電していません。揚水発電所をこれだけ作るには、貴重な自然の残る森林を広大に破壊し、多量の資源とエネルギーを使っています。
揚水発電所は原発の稼働率を見かけ上、非常に高くするために裏で働いていたのです。
「電気温水器・電気自動車・エコアイス(夜間電力で氷を作り昼間冷房する)」を、電力会社は積極的に販売していますが、これは原発の夜間余る電気を使うためです。原価割れの大変安い価格で電気を売ってでも、原発を多く作るために夜間余る電気の捌け口が要るのです。それらの電気は放射能のゴミを作り撒き散らす、原発により作られるのです。
こうしたムダの多い原発などを抱え、電力会社は大きな設備投資をしています。日本でも電力自由化が進む中、身軽な新規発電参入企業が増えています。
卸電力事業者(IPP)落札者企業一覧 |
||||
| 電力会社 | 開始年度 | 卸供給業者 | 燃料種 | 出力(万kW) |
| 96年度落札企業 | ||||
| 北海道電力 | 2001 |
新日本製鉄(室蘭) | 石炭 | 10.00 |
| 東北電力 | 2000 |
新日本製鉄(釜石) | 石炭 | 13.6 |
2000 |
太平洋金属(八戸) | 石油 | 4.4 |
|
| 東京電力 | 1999 |
荏原製作所(藤沢) | 都市ガス | 6.4 |
1999 |
昭和電工(川崎) | 残さ油 | 12.42 |
|
1999 |
トーメンパワー(寒川) | 灯油 | 6.55 |
|
1999 |
日立造船(那珂) | 重油 | 10.27 |
|
2000 |
日本石油精製(横浜) | 分解軽油 | 4.85 |
|
2000 |
日立製作所(日立) | 灯油 | 10.05 |
|
2000 |
ポリプラスチックス(富士) | 重油 | 4.7 |
|
2001 |
ゼネラルエネルギー開発(川崎) | 残さ油 | 54.75 |
|
| 中部電力 | 2000 |
明海発電(豊橋) | 石炭 | 13.5 |
2001 |
中山共同発電(武豊) | 石炭 | 13.55 |
|
| 関西電力 | 1999 |
神戸製鋼所(加古川) | その他 | 5.45 |
1999 |
新日本製鉄(広畑) | 石炭 | 13.3 |
|
1999 |
中山共同発電(大阪) | LNG | 14.4 |
|
2002 |
大阪ガス(西島) | LNG | 14.62 |
|
2002 |
神戸製鋼所(灘浜) | 石炭 | 66.5 |
|
| 九州電力 | 1999 |
新日本製鉄(八幡) | 石炭 | 13.7 |
1999 |
九州石油(大分) | 残さ油 | 13.7 |
|
| 97年度落札企業 | ||||
| 北海道電力 | 2004 |
出光興産(苫小牧市) | 残さ油 | 1.5 |
2004 |
日本製紙(釧路市) | 石炭 | 8 |
|
2004 |
日本石油精製(室蘭市) | 残さ油 | 5 |
|
| 東北電力 | 2000 |
ニチメン(佐渡郡) | 石油 | 0.53 |
2001 |
日本セメント(糸魚川市) | 石炭 | 13.4 |
|
| 東京電力 | 2002 |
川崎製鉄(千葉市) | 都市ガス | 39.26 |
2002 |
品川白煉瓦(座間市)(辞退) | 都市ガス | 10.95 |
|
2003 |
日本石油精製(横浜市) | 残さ油 | 34.2 |
|
2003 |
東亜石油(川崎市) | 副生ガス、残さ油 | 23.8 |
|
| 中部電力 | 2003 |
コスモ石油(四日市市) | 残さ油 | 20 |
2004 |
出光興産(知多市) | 残さ油 | 22.557 |
|
| 関西電力 | 2004 |
神戸製鋼(神戸市) | 石炭 | 66.5 |
2004 |
興亜石油(山口県玖珂郡) | 残さ油、石油、コークス | 13.23 |
|
| 中国電力 | 2003 |
宇部興産(宇部市) | 石炭 | 19.5 |
2003 |
三菱レイヨン(広島県大竹市) | 石炭 | 4 |
|
| 九州電力 | 2002 |
新日本製鉄(大分市) | 石炭、副生ガス | 30 |
- 『丸紅, 仏ビベンディ』 99年12月に合弁会社設立を合意
- 『三菱商事』 2000年3月 全額出資子会社を設立
- 『米エンロン,オリックス』 2000年1月に合弁会社設立(エンロン社倒産・中止)
- 『英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル』 天然ガスを使った発電事業を検討
- 『米テキサコ』 2007年に発電設備運転開始
- 『NTT、東京ガス、大阪ガス』 2000年5月に共同出資会社設立
活気付く新規発電参入企業
上記IPP企業一覧表にあるように、新規参入企業の発電容量は多く、電力会社独占体制との競争が激しい。このように新規企業が参入可能なのは、既存の電力会社の経営は甘くコストが高いため。日本の電力料金は高いのです。
日本の高い電力料金
日本の電気料金は産業・家庭用とも高い。電力自由化への産業界の圧力があり、外資系の参入希望がある理由(アメリカより2倍の料金でも日本なら利益が出る)。

原子力は過大に評価されている
原子力の利用が増えたといっても、一次エネルギー(発電用以外に運輸など発電用以外を含む)に占める割合は少ない。実際には石油の大幅増が支えている。
省エネやエネルギー利用効率の向上(廃熱の利用など)と、限りのある石油や原子力からの脱却が課題である。
EUやアメリカでは一次エネルギーの約1割を、2010年までにバイオマス利用でまかなう予定だ。バイオマスは「エネルギー源として利用される生物資源」で、森林や草や家畜の糞尿などを、ペレットにしたり発酵・分解して燃料とする。