シュラウドと保安院の罪1・2・3・4・5・6
阪上 武 sakagami,takeshi
ふくろうの会(福島老朽原発を考える会)
「シュラウドと保安院の罪」(02/08/30)
昨日は福島県副知事の怒りに声を震わせての会見が印象的でした。今回の事件により,プルサーマル実施は問題外となりましたが,それとは別に,事件から直接に問題となるのが,原発本体の安全性の問題です。
事件の張本人は東電ですが,保安院も問題です。原発の安全性が保証できないとの知らせを受けながら原発を止めることができず,ひび割れを想定しての安全評価を隠蔽・改ざんを行った張本人の東電にやらせてその結果をそのまま流すような保安院に,果たして存在意義があるのかが疑われます。それだけでなく,保安院も隠蔽に加わっていたのではという疑いも頭をもたげます。
この間問題となっていたシュラウドのひび割れについて,東電,保安院の資料をみて気がついたことをとりあえず列挙してみました。<東電のうそ>
東電は,柏崎刈羽原発3号機のシュラウドひび割れ問題に際して,これから検査を行う箇所が,外側3箇所(H1,H2,H6a),内側1箇所(H3)の円周部分であることを,28日の柏崎での市民との交渉で明らかにしています。ひび割れの可能性のあるのは溶接部近傍で,シュラウドにはそれが内側,外側合わせて26箇所あり,2001年の福島第二原発3号機でシュラウドにひび割れが見つかった際には,この26箇所が検査対象になっていました。(障害物があるとの理由で,実際には全てを検査したわけではありません。)ところが,今回はそれが4箇所であるというのです。これについて東電は,福島第二原発3号機の経験から、機械加工部の溶接箇所に問題があることが判明しており,機械加工を施しているのがリング(シュラウドの途中で格子板を乗せるために段差になっている箇所)の外周と内周であるので,検査はそのリングとの溶接部だけでよく,それが外側3箇所,内側1箇所である,と説明しています。
ところが,今回の発表では,柏崎刈羽3号機と同じSUS316L(応力腐食割れ対策材料)を使った号機でも,H4,H7といった,リングではない,肉厚がもっとも薄い胴本体でもひび割れが見つかっており,さらに,垂直に溶接した部分にもありました。東電は,他にも問題箇所があると知っていて,4箇所だけでよいと強弁していたことになります。東電は,柏崎刈羽3号機のシュラウドひび割れが,国内3例目であるとのうそをついていましたが,ひび割れが発生する箇所についてもうそをついていたことになります。垂直溶接部でのひび割れの可能性については,市民側が,アメリカでの事例を示したのに対し,東電は,材質が異なるシュラウドで教訓にならないと突き放していました。<保安院のうそ?>
上記の問題は保安院にも関わります。検査箇所を4箇所に限定したのは他ならぬ保安院でした。
東電が福島第二原発3号機でシュラウドにひび割れが発見されたと報じたのが2001年7月,これを受けて保安院がBWR原発を持つ電力会社に,検査のスケジュールを出すように求めたのが2001年10月で,この指示における検査対象がその4箇所だったのです。保安院がこの時点で,他の箇所にもひび割れが発見されていた事実を把握していたのであれば,むしろ保安院が率先して,隠蔽工作を行っていたことになります。点検指示から,疑惑箇所を意図的にはずした可能性もあります。<関連記事>
朝日新聞ニュース速報
東京電力は、原子炉内の大型機器であるシュラウドに損傷の可能性がある原発5基のうち4基をここ1年の間に点検し、経済産業省原子力安全・保安院に「異常なし」と報告していたことが29日、分かった。
未修理のひび割れがある疑いがあるのは福島第一原発4号機と同第二原発2、3、4号機、柏崎刈羽原発1号機。このうち柏崎刈羽1号機を除く4基で点検をしていた。昨夏に福島第二原発3号機でひび割れが見つかり、保安院が指導した。
保安院は「(今回の)疑いのある場所と点検を求めた場所が違う」としているが、今後の調査によってはこの点検の妥当性が問われそうだ。[2002-08-30-03:03]<安全評価の問題>
ひび割れがあっても大丈夫とする安全評価にも問題があります。東電はシュラウドで疑いのあるひび割れについて,これが10年間に進展する長さを想定し,深さ方向は貫通したとの条件で耐震性の評価を行っており,保安院は,この結果をそのまま引用して,安全上は問題はないなどと言っています。しかしまず,記録されていた数値の信頼性に問題があるでしょう。現実にはもっと長いひび割れが存在する可能性があります。
さらに,東電の評価が,ひび割れが,発見されているものだけから成長することを前提にしている点にも問題があります。柏崎刈羽3号機で見つかったひび割れは,シュラウドの全周の8%に断続的に点在していました。このことは,ひび割れが発生する条件にある箇所においては,ひび割れは全周の至る所で発生し,それが繋がって長くなることを示唆しています。すなわち,1つのひび割れが見つかった場合には,10年後にそのひび割れが成長するだけでなく,同じ条件にある円周のあちこちでひび割れが発生し,成長し,繋がって長くなる可能性を考慮する必要があります。東電の評価にはこうした想定はありません。ついでに言えば,10年後だけを想定しているのも問題です。<安全管理の後退>
あと,シュラウドに限らない問題として,今保安院が進めている,定期検査の簡素化,安全管理の後退との関係も気になります。
中部電力が裁判において,漏えいを頻繁に起こしている浜岡原発1.2号機について「劣化していない」「老朽化問題はない」と言い張っているように,今の安全管理体制においては、原発の機器は全て新品同様であり、建前上は,劣化あるいは老朽化はあってはならないことになっています。
ところが実際には,全てのひび割れを発見,修理することは技術的に不可能であり,さらに、定期検査を短縮しなければならないという経済的な要求が,ますますこれを不可能にしています。ひび割れによる漏えいは後をたたず,漏えいと交換のイタチごっこが続いています。隠蔽と改ざんは,このような背景で発生したと思われます。
保安院は今,予防保全から事後保全へ,すなわち,漏えいが起こらないように常に新品同様の状態を保つこれまでの保全から,漏えいが起こってからそこだけを修理すればよいとする保全へと,原発の安全管理を大幅に後退させよう動いています。保安院の安全管理の後退を許せば,「ひび割れがあるもとでの運転」を、隠蔽,改ざんなどしなくとも,おおっぴらに行うことができることになります。保安院は浜岡原発でこれの先鞭をつけようとしていますし,もしかしたら今回の東電の事件も,こうした安全管理の後退に利用しようとするかもしれません。一方で原発の危険性は確実に増すことになります。<関連記事>
共同通信ニュース速報
原子力発電所の機器や設備の保全管理について、経済産業省原子力安全・保安院は二十五日までに、安全に影響のない機器については、損傷が発生してから対応する「事後保全」の考え方を体系化する検討を始めた。
原発の検査制度の見直しの一環。現在は「健全な状態の維持」を求め、具体的には、配管の肉厚が薄くなっていないかを検査したり、一定の年数が来たものは一律に交換するなどの「予防保全」で対応しているものが多い。
安全上重要な機器については、こうした考え方を基本的に維持する。安全に影響のない機器は、事業者が策定する保全管理計画の中で、損傷が発生してから修理する事後保全を認める。
現在でも事実上、事後保全となっているものはあるが、本格的に採用すると「その部分は運転中に壊れてもいい」ということを認めることになるため、各機器の安全上の重要性を評価するなど体系化を考える。
このほかに、運転に伴う機器、設備の劣化を考慮した技術基準として、配管の肉厚が薄くなったり、傷などの欠陥があった場合、安全と評価されればその状態のままでの運転継続を認める「維持基準」を新たに定めることも検討している。(了)[2002-08-25-16:56]
シュラウドと保安院の罪2
東電事件のシュラウド問題と保安院に絞ってのやや細かい考察パート2です(02/09/02)さかがみ■シュラウド問題の謎解き
今回の事態で,これまで謎であったものが「そういうことだったのか」という点がいくつかあります。
例えば,1994年に東京電力が福島第一原発2号機のシュラウドの円周全体に及ぶひび割れが発見されたと公表した件については,なぜそれまでの点検で,進展途中のひび割れが発見できなかったのかが謎でした。報道によると,GEIIは,1986年には既に発見していたようです。
それに,東井さんが指摘されているように,シュラウドの交換についてもあります。東京電力は,福島第一原発2号機については,一旦はブラケットという「かすがい」をあてるだけで運転を再開するのですが,その後「交換」に方針を変え,しかも交換の対象を,ひび割れのない(ことになっていた)福島第一原発1・3・5号機にも広げます。なぜここまで大がかりな対処をとるのかが謎でしたが,実際にはこうした号機にもひび割れが発見されていたのです。
ただ,となると敦賀原発や島根原発で交換したのはなぜなのかということになりますよね。もしかして…。■福島第二原発3号機の平成9年度の定期点検で何があったのか?
東京電力が福島第二原発3号機で全周に及ぶひび割れが発見されたと報じたのが2001年7月ですが,東電の報告書では,ひび割れは,水中カメラで清掃作業後の状態を確認しているときに,偶然映っていたものを見つけたことになっています。
「第11回定期検査中の平成13年7月6日,炉内清掃状況のビデオ確認を行っていたところ,ひびらしきものが見えたことから水中テレビカメラで確認した結果…」(東電2001年8月24日報告)
この箇所の自主点検は,平成9年度の定期点検時に行われていましたが,東電は,そのときには見つからなかったと言っています。一方で東電によると,ひび割れが進展するためには,10年単位の時間が必要で,であればなぜ平成9年度の点検で見つからなかったのか問題で,当時も問題となりました。
今回の事態から察すると,次のようなこと起きていたことも考えられます。
・福島第二原発3号機のひび割れは,80年代から90年代前半のある時期にGEIIが見つけていた。(H6aの全周のひびが隠蔽の対象となっていたかどうかは,東電・保安院の公開資料では必ずしもはっきりしない。)
・東電はそれを隠すように指示。
・平成9年の自主点検(今回GEIIが不正に関わっていたとされているのは1995年までなので,これを過ぎた時期)において,東電はこのひび割れが進展しているのを確認したが,これを隠蔽。
・2001年3月からの定期検査では,自主点検の対象になっていなかったが,「清掃」の名目で問題箇所を磨いて,水中カメラで確認。ひび割れが全周に及んでおり,これ以上は隠しきれないと判断して公表…。■事業者に安全評価を任せる保安院方式の破綻
東京電力は,2001年7月に公表した福島第二原発3号機のシュラウドひび割れについて,8月24日に保安院に対し,応力腐食割れ対策材料における応力腐食割れが,リング部だけに起こり得る現象であるとの報告を提出しています。保安院は9月6日にこの報告を妥当とし,各電力会社に点検計画を立てるよう指示を出すのですが,その際の点検指示箇所は,リング部だけでした。
「事業者は、き裂の発生原因として、製作時における機械加工により炉心シュラウド下部リング外表面が硬化したため、溶接による引張り方向の残留応力と運転中の炉水環境下で粒内型応力腐食割れが発生し、これが初期き裂となって、その後、粒界型応力腐食割れが進展したものと推定しているが、本推定は、当院としても科学的合理性を有していると判断する。」(保安院2001年9月6日文書)
「BWR設置者は、下記のとおり点検を行うこと。
(1) 点検対象BWRの選定
当該機と同様、炉心シュラウドリング表面の溶接部近傍に機械加工を施しており、機械加工面に対する残留応力対策を行っていないBWR(当該箇所の一部のみ残留応力対策を行っているものも含む)を点検対象として選定すること。(2) 点検箇所及び実施時期
@ (1)により選定されたBWRについて、今回き裂が認められた箇所と類似のリング溶接線外側については、炉心に装荷されている燃料を取り出さずに目視点検できることから、至近の定期検査にて目視点検を実施すること。
A (1)により選定されたBWRについて、今回き裂が認められた箇所と類似のリング溶接線内側については、炉心に装荷されている燃料を全て取出して点検する必要があることから、全燃料の取出しが計画されている定期検査時において、目視点検を実施すること。」(保安院2001年9月6日文書)今回の事態から,このとき既に,福島第二原発及び柏崎刈羽原発において,応力腐食割れ対策材料についても,リング部以外でもひび割れが発見されていたことが明らかになりました。保安院は東京電力にまんまと騙されたことになります。あるいは共謀して隠蔽を図ったのでなないでしょうか。東電社員の100人からの人間が知っていた事実が,保安院に伝わらなかったというのは信じがたい話です。
いずれにしろ,こうした事実は,事故の調査を,事故を起こした張本人である電力会社にやらせ,その結果を「妥当である」と鵜呑みにして決着をするという「保安院方式」の破綻を意味します。中部電力の浜岡原発の事故調査も同じ方式で行われました。専門家による公開調査は,別に原子力安全委員会が行うのですが,議論の場に中部電力が呼ばれることはなく,中部電力の調査報告を受けた保安院の人間が中部電力に成り代わって答弁するというおかしなものです。結局は中部電力のいいようにやられてしまったのではないでしょうか。
ところが,このようなやり方は,今回の不祥事の調査についても変わっていません。ひび割れを放置しながら運転を続ける東電に対し,保安院は止めて調査を行うことをせず,「安全上は問題はない」とする安全評価を,こともあろうに,事件の犯人である東京電力にやらせ,それをそのまま鵜呑みにしています。「これらの事案は,ひび割れ等の状況について安全上より厳しく評価したとしても,安全性に影響を与えるものではない旨事業者から報告を受けておりますが,当院としてはその根拠等につき詳細な資料提出を求め,それら資料に基づき分析したところ,直ちに安全性に重大な影響を与える可能性があるものは含まれていないと判断いたしました。」(保安院2002年8月29日文書)
■新潟県知事が原発を止めたこと
定期点検を早めたとはいえ,新潟県知事が柏崎刈羽1号機の運転を止めた,というのは,事が福島に及ぶという点でも(すでに福島の4機が問題になっているようです),保安院には止められなかったことをクローズアップする点でも画期的なことだと思います。
■シュラウドについて号機毎の情報(付録)
□福島第一原発1号機
・「未報告、未修理のひびまたはその兆候の疑いあり」
・平成12年度(22回)に交換(SUS304→SUS316L)□福島第一原発2号機
・「未報告、未修理のひびまたはその兆候の疑いあり」
・公表したひび…H3内側ほぼ全周
・1994年に公表。ブラケットをつけて運転再開。その後交換。
・平成10年度(17回)に交換(SUS304→SUS316L)□福島第一原発3号機
・「未報告、未修理のひびまたはその兆候の疑いあり」
・平成9年度(16回)に交換(SUS304→SUS316L)□福島第一原発4号機
・ひびの疑い…H3の母材部に1本(500mm),H3に2本(387〜457.2mm)うち1本は縦方向
・SUS304L(タイプ3)
・保安院の点検指示箇所…リング溶接線外側4箇所(H1,H2,H6a,H6b)内側1箇所(H3)
・点検結果(保安院報告)
H1外側 …平成5年度(12回),平成13年度(18回)異常なし
H2外側 …平成5年度(12回),平成13年度(18回)異常なし
H6a外側…平成9年度(15回),平成13年度(18回)異常なし
H6b外側…平成5年度(12回),平成13年度(18回)異常なし
H3内側 …平成9年度(15回)異常なし,平成14年度(19回)<予定?>□福島第一原発5号機
・「未報告、未修理のひびまたはその兆候の疑いあり」
・平成11年度(17回)に交換(SUS304→SUS316L)□福島第二原発2号機
・ひびの疑い…H3に5本(13〜45mm)うち2本は縦方向,H4に18本(2〜130mm)
・SUS316L(タイプ4)
・保安院の点検指示箇所…リング溶接線外側3箇所(H1,H2,H6a)内側1箇所(H3)
・点検結果(保安院報告)
H1外側 …平成6年度(8回)異常なし,平成14年度(14回)<予定?>
H2外側 …平成6年度(8回)異常なし,平成14年度(14回)<予定?>
H6a外側…平成8年度(10回)異常なし,平成14年度(14回)<予定?>
H3内側 …平成8年度(10回)異常なし,平成15年度(15回)<予定>□福島第二原発3号機
・ひびの疑い…H2に1本(203.2mm),H4に2本(7〜13mm),H7に2本(203.2mm)
・公表したひび…H6aにほぼ全周
・SUS316L(タイプ4)
・2001年7月にひび割れを公表。他の箇所を点検し,異常なしと報告。タイロッドをつけて2001年12月に運転再開□福島第二原発4号機
・ひびの疑い…H3に2本(87.88〜94.49mm)
・SUS316L(タイプ4)
・保安院の点検指示箇所…リング溶接線外側3箇所(H1,H2,H6a)内側1箇所(H3)
・点検結果(保安院報告)
H1外側 …平成7年度(6回),平成13年度(11回)異常なし
H2外側 …平成7年度(6回),平成13年度(11回)異常なし
H6a外側…平成9年度(8回),平成13年度(11回)異常なし
H3内側 …平成9年度(8回),平成13年度(11回)異常なし□柏崎刈羽原発1号機
・ひびの疑い…H4に2本(20mm)
・SUS316L(タイプ4)
・保安院の点検指示箇所…リング溶接線外側3箇所(H1,H2,H6a)内側1箇所(H3)
・点検結果(保安院報告)
H1外側 …平成6年度(7回)異常なし,平成14年度(14回)<予定>
H2外側 …平成13年度(12回)異常なし
H6a外側…平成13年度(12回)異常なし
H3内側 …平成9年度(9回)異常なし,平成15年度(15回)<予定>□柏崎刈羽原発3号機
・公表したひび…H6aに19本(合計990mm)
・SUS316L(タイプ4)
・保安院の点検指示箇所…リング溶接線外側3箇所(H1,H2,H6a)内側1箇所(H3)
・点検結果(保安院報告)
H1外側 …平成14年度(7回)異常なし
H2外側 …平成14年度(7回)異常なし
H6a外側…平成14年度(7回)亀裂発見
H3内側 …平成15年度(8回)の予定を変更して調査中
シュラウドと保安院の罪3(02/09/03)
■グリーンアクションのアイリーンさんから貴重な情報がもたらされました。
原子力業界誌のニュークレオニクスウィーク誌2001年8月30日号(この日付が1つのポイントです。)に掲載されていた福島第二原発3号機で発見された全周に及ぶひび割れに関する記事です。記事には「情報源によると,東電はMETI(経済産業省)に連絡をとる少なくとも1年以上前から福島第二原発3号炉の(シュラウド)亀裂発覚の事実を知っていた。このことに詳しい産業界のあるニュース・ソースによると,「この種の問題は東電にとって新しいことではなかったが」316Lにとって持つ意味からして「とてもデリケートだと評価されていた」とあります。この記事は3つのことを明らかにします。
1.全周のひび割れは平成9年度の定期検査時には発見されていた
前回のmailで,2001年7月6日に,清掃時に偶然発見されたと東電が発表した福島第二原発3号機のシュラウドのH6aの全周に及ぶひび割れが,実は平成9年度(1997年度)の定期検査時の自主点検で既に発見されていた可能性を指摘したのですが,上記の記事はこれが事実であることを裏付けるものではないでしょうか。
記事には,東電はひび割れのことを経済産業省に報告する1年以上前から知っていたとあります。2001年から1年以上前となると,ひび割れの発見の機会はこの平成9年度にまで遡ります。
もし,東電によるひび割れの発見が平成9年度であれば,この事例は,今問題となっているGEII社のリストから挙げられている1995年までの29件の改ざん・隠蔽事例とは,また別の事例ということになります。
もちろん,これがさらに遡って80年代から90年前半にかけて既に発見されていた可能性もあるのですが,いずれにしろ東電には明確な説明が求められます。2.保安院は少なくとも2001年8月にはこの不正を把握していた
この記事の日付は2001年8月30日です。この業界誌は原子力関係者なら誰でも目にするものですから,記事の内容は保安院の人間も承知していたはずです。それに東電が業界誌の記者に話すようなことを,保安院が知らないとは考えられません。
東電が1年以上もひび割れの存在を隠していたというのは明らかに不正です。内部告発を既に受けいた保安院は,少なくともこの件に関しては,2001年8月の時点で,不正の具体的な状況を把握していたことになります。
ところが,保安院はこれを追求して明らかにすることをしないばかりか,東電のうそで塗り固められた報告書に従って,検査箇所を限定した点検指示を出していたのです。3.「316Lの持つデリケートな意味」と不正の動機
記事は,東電が不正を行った動機も教えてくれます。南社長は,不正の動機としてバブル期で電源供給が逼迫していたことを挙げていますが,今問題にしている極最近の事例ではこのような動機は存在しません。ポイントは「316Lにとって持つ意味」,そして「検査の限界」です。
316LというのはSUS316Lというステンレスの材料の種類を表す記号です。末尾の「L」は,応力腐食割れを起こりにくくするために,ステンレス中の炭素を低減(Low)していることを示しています。従来の材料はSUS304というもので,70年代から80年代にかけて,これを用いた多くの原発の配管等で応力腐食割れが発生し,これを,原発の稼働率を5割程度まで落としてまで,末尾にLのついた応力腐食割れ対策材料に交換してきた歴史があります。
シュラウドについては,まず従来の材料であるSUS304の福島第一原発2号機で1986年にGEIIが応力腐食割れによるひび割れを発見し,東電はこれを隠蔽しました。1994年になって全周に及んだひび割れを隠しきれなくなって公表し,後に,同じSUS304でできた福島第一原発1・3・5号機を全て,応力腐食割れ対策材料であるSUS316Lに交換しました。その1・3・5号機にもひび割れがあり,これを隠蔽していたことは前回のmailの通りです。
さて,問題のSUS316Lです。福島第一原発6号機以降ははじめからこの材料を使っており,SUS304はすべてこの材料に交換したことから,シュラウドの応力腐食割れ問題はこれで一件落着のはずだったのです。ところが応力腐食割れが起こらないはずのSUS316Lで,全周に及ぶひび割れが見つかったというのが,福島第二原発3号機の事例だったのです。今回の事件で,それ以外にもSUS316Lでのひび割れの事例があり,これを隠していたのがわかったのですが,こうした事態に対して,東電が,そしておそらくこれは保安院も一緒になって考えたのが以下のようなことだったと思われます。・SUS316Lについては応力腐食割れが起こらない材料と宣伝してきたので,ひび割れが見つかっても隠してきた。しかし福島第二原発3号機のH6aのひび割れについては,平成9年度の点検で進展が確認され,2001年に「清掃」の名目で行った検査ではこれが全周に及んでおり,これではさすがに隠しきれないので公表する。
・しかしSUS316Lのシュラウドを交換することはコスト的にできない。もし交換となると新しい炉にも手をつけなければならず,経済的に成り立たない。
・そこでまず,SUS304からSUS316Lに交換したものについては,ひび割れが起こる溶接線を減らした一体構造にしたので,問題はないことにする。
・残りのSUS316L(福島第一原発4号機はSUS304L)については,これまで日本で見つかっている2つの事例がいずれもシュラウド中のリング部だけであることから,応力腐食割れはリング部にしか起こらないという安全評価をでっち上げて,ここだけを検査すればよいことにする。
ひび割れの発生箇所をリング部に限定すると,点検が必要な箇所は,シュラウドの外側3箇所,内側1箇所だけで済みます。そして,その4箇所の目視検査が可能な検査率は,100%,90%,70%,100%であり,70%しかないH6aについても,ひび割れの兆候があれば超音波探傷検査を行うということにすれば,超音波探傷検査の検査不可能な箇所が,目視検査の不可能な箇所とは位置がずれることから,どちらかが行える箇所が90%を超え,「検査で全て見ています」という建前を通すことができます。
ところが,ひび割れが,リング部以外の胴体部にも発生し,さらに垂直部にも発生するとなると,検査が必要な箇所が一気に増え,H1〜H7,V1〜V26のそれぞれの外側と内側の全てが対象となってしまいます。さらにこの中には,H6aの内側0%,H6bの内側8%,V7,8の内側10%というように検査が物理的に不可能な箇所があり,全体では検査率が50%になってしまいます。これでは,「検査で全て見ています」という建前を通すことができず,ひび割れがないという保証がないもとでの運転を認めなければなりません。
これを避けるためには「ひび割れはリング部だけ」と言い張るしかなく,そのためには,リング部以外のひび割れや垂直部のひび割れは,絶対に隠さなければならない,ということになるのです。■この問題で,グリーン・アクション,美浜の会と共に質問書を提出しました。
福島第二原発3号炉のシュラウドひび割れ
東電が、発表より1年前に既にひび割れを知っていた事実に関する質問書経済産業大臣 平沼赳夫様
東京電力は、福島原発U−3号炉のシュラウドにひび割れが存在していたと、昨年(2001年)7月に貴省に報告し、公表しました。
しかし、Nucleonics Week誌の2001年8月30日号には以下のように記載されています。「情報源によると、東電はMETI[経済産業省]に連絡をとる少なくとも一年以上前から福島第二原発3号炉の[シュラウド]亀裂発覚の事実を知っていた。このことに詳しい産業界のあるニュース・ソースによると、「この種の問題は東電にとって新しいことではなかったが」316Lにとって持つ意味からして「とてもデリケートだと評価されていた」。
このことは、東京電力が福島U−3のシュラウドひび割れを、貴省に報告する1年以上前から知っていながら隠していたことを示しています。国際的にも有名な雑誌に記載されたのですから、当然貴省も御存じのことだと思われます。
この件につき、以下の質問に答えてください。1.2002年8月29日付の原子力安全・保安院が発表した報告書「原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係わる不正等に関する調査について」の中には、この事実は含まれていません。すなわち、29件の記録ねつ造等には含まれていません。それはなぜですか。
2.この事実そのものについて東電に確認しましたか。
3.この記事は、新しい隠ぺいの事実を意味しますが、それについてはどのような措置を取るつもりですか。
4.監督官庁としての貴省の責任は重大です。貴省の責任を明らかにしてください。
9月5日(木)までに、文書にて御回答ください。
2002年9月3日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
福島老朽原発を考える会 代表:阪上 武
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之■最後にもう1つ「傷があっても止めない」心配していた定検改悪の動きです。これが保安院の真の目的か!?
共同通信ニュース速報
東京電力の原発トラブル隠しで、経済産業省原子力安全・保安院は三日、原発の機器、設備に損傷があった場合に、直ちに補修が必要なのか、安全上の余裕があって運転を続けられるのかを客観的に判断するための「許容欠陥基準(維持基準)」を二○○三年に導入する方針を固めた。
トラブル隠しの中には、東電社員が安全上問題ないと勝手に判断、ひび割れやその疑いのある痕跡を隠したケースが含まれるとみられ、そうした恣意(しい)的な判断を防ぐのが狙いだ。
現在の電気事業法の技術基準は、運転開始後も、運転開始前の新品と同じ状態を求める立場。東電の南直哉社長は会見で、修理により原発を止める期間が長引くことを恐れた「現場のプレッシャー」が、トラブル隠しの背景にあったと強調した。
保安院は、トラブル隠し自体は許されない不正行為だとして違法行為がなかったかを含めて調査を進める一方、合理的な規制のための見直しの一環として、米国などでも採用している維持基準を導入することにした。
機器、設備ごとに、その後拡大の恐れがある損傷が見つかった場合に、次の定期検査までに安全上問題となる大きさまで広がらないかをこの基準で評価し、安全ならば運転を認める。
国内では日本機械学会が発電用設備の維持規格を既に定めており、事業者から申請があれば、国が電気事業法に基づきこの規格に適合するかを判断、認可を与える方法が有力だ。(了)[2002-09-03-19:56]■さあ,今日は東電交渉だ。
シュラウドと保安院の罪4(02/09/07)
先に話を整理しておくと,福島第二原発3号機のシュラウド全周(H6a)ひび割れ問題について,以下の疑惑を問題にしています。
1.問題のひび割れは,平成9年度の定期点検時に東電が既に見つけていたのにこれを隠蔽し,2001年7月6日に「清掃」の名目で再確認し「初めて見つけた」と嘘をついたこと
2.2001年8月24日に東電が保安院に提出した報告の中で,既ににリング部以外のひび割れが見つかっていたにもかかわらず,SUS316Lの応力腐食割れはリング部にしか起こらないとのでっちあげの評価を行ったこと。
3.保安院は2001年9月6日に,シュラウドのリング部に限定した点検指示を各電力会社に出した。これは,点検箇所を限定し,検査を簡略化する意味でも,東電の他の隠蔽箇所の発覚を防ぐ意味でも,東電の意向に完全に合致するものであり,でっちあげの評価に連動した動きである。1.2.3.の一連の流れに保安院が関与していた疑いがあること。
で,3.の問題に切り込むための重要な資料がアイリーンさんから寄せられたのが9月3日でした。それは既にお伝えしたように,2001年8月30日付けのニュークレオニクスウィーク誌にある,東電は,経済産業省に報告する少なくとも1年前には,ひび割れはの事実を知っていたという記述です。日付を見るとわかるように,ちょうど東電報告と保安院の指示の間になります。これで1.については証明され,3.については,少なくともこの記事が出た段階で,内部告発の調査中であった保安院は東電の隠蔽を知り得たことになります。もしこれを握りつぶしていたのであれば,共謀の疑いがますます濃くなります。
そこでまず,9月3日に,グリーンアクションと美浜の会とふくろうの会の連名で,前回流した質問書を保安院に送りました。質問書は,記事が,東電が問題のひび割れを隠蔽したことを明らかにしていることを前提に,当時の記事について保安院はどのような対応を取ったのかを質すものでした。すると9月5日の正午になってNHKが次のニュースを流しました。
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NHKニュース速報
東京電力が原子力発電所の点検記録を不正に記載し、トラブルを隠していた問題で、福島第二原子力発電所の三号機では、平成九年の定期検査で原子炉内部のシュラウドと呼ばれる構造物に広い範囲のひびが見つかっていながら国に報告しないで運転を続け、去年になって初めて見つかったとウソの発表をしていたことが明らかになりました。
経済産業省の原子力安全・保安院などによりますと、このひびは平成九年の定期検査の際に下請けのメーカーが見つけたもので、シュラウドの全周にわたり、およそ十六メートルが確認されていたという事です。[2002-09-05-10:32]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これは,私たちの質問書を見て,放っておくと市民団体の追求により明らかにされてしまうと知った保安院による意図的なリークと思われます。一年も前に知っていながらぬけしゃあしゃあと…。
そこで私たちは,抗議並びに要求書を9月5日に保安院に送りました。文書では,最初に挙げた問題のうち,2と3の問題も指摘しています。以下に掲載します。
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2002年9月5日
福島U−3号炉シュラウドひび割れ
経産省が東電と一緒になって隠していた疑惑に関する抗議並びに要求書
経済産業大臣 平沼赳夫様
本日正午のNHKニュースなどで、福島第二原発3号炉でのシュラウドひび割れは、1997年(平成9年)の定期検査時に既に発見されていたにもかかわらず、東京電力が隠蔽し続け、昨年7月の定期検査で発覚したかのようにウソをついていたと報道されている。そして、このことを解明しているのは、貴省の原子力安全・保安院であり、今後調査を行うとされている。
あたかも保安院が自らこの東電のウソを見つけたように発表しているが、これこそ大嘘つきである。この福島U−3号炉のシュラウドひび割れについて東電は、1年以上前からひび割れの存在を知っていたことが、昨年8月のNucleonics Week誌の記事の中で暴露されている。この事実を私達3団体は、すでに指摘し、9月3日付で貴省に質問書を送っていた。この時、貴省の職員は、「忙しくてとても5日(質問書の回答期限)には回答できない」旨をわざわざ電話してきた。しかし結局、市民団体に問題を指摘されたため、自らが東電と一緒になってシュラウドのひび割れを隠していたことが明るみに出ることは避けられないと判断したのだろう。あたかも自らが東電のウソを発見したかのような挙にでたのである。このような貴省の姿勢に断固抗議する。
貴省が東電と一緒になって、福島U−3号炉のシュラウドひび割れの存在を隠していたということは次のような事実から明らかである。
国際的に有名なNucleonics Week誌に記載された「東電のウソ」を貴省が知らなかったはずがない。この記事は2001年8月30日に出されている。その時期は、既にGE職員からの内部告発があり、貴省が「調査していた」時期と一致している。
その後の展開も不可解である。東電は、2001年8月24日に福島U-3号炉のシュラウド全周14メートルに及ぶひび割れについての報告書を保安院に提出していた。この中で、応力腐食割れが起きにくいとされたSUS316Lでは、応力腐食割れはリング部において発生するものであると評価している。しかし、今回の一連の不正の中で、この時既に東電は、同じ炉のリング部以外のシュラウドの胴本体においてもひび割れを確認し、これを隠蔽していたことが明らかになっている。つまりひび割れがリング部以外にも発生することを知っていたのである。これを隠したことは、発見時期と並ぶもう一つのウソである。
理由ははっきりしている。東電は、従来材料のSUS304を用いたシュラウドを既に交換していた。SUS316Lはその交換したシュラウドの材料である。これを交換するとなると、対象には新しい炉も含まれ、莫大なコストがかかる。交換せずに済ますには検査の徹底を図るしかないが、応力腐食割れが発生するシュラウドの溶接部は、リング部以外の部分を含めると非常に長く、内側は燃料をはずす必要があり、はずしても検査が不可能な箇所が多く存在する。検査対象をリング部に限定すれば、検査箇所は4カ所で済み、ほとんどの部分を検査することができる。検査コストを押さえ、そしてリング部以外のひび割れを隠蔽し続けるためにも、ひび割れをリング部だけに限定する必要があったと思われる。
これに対する保安院の対応には大きな問題がある。東電の報告を受けて保安院は、9月6日付で、東電の他の号機と他の電力会社にもシュラウドの点検指示を出した。しかしその時の指示は、東電がひび割れを隠ぺいしていることが明らかになっているにもかかわらず、東電の報告を鵜呑みにする形で、検査対象箇所をリング部の4カ所だけに極めて限定した内容だった。保安院の指示は、検査を簡略化し、隠蔽していたひび割れも極力見つからないようとの、東電の意図に完全に合致したものであったと言わざるをえない。要求事項
1.私達の9月3日付の質問書に即刻回答すること。
2.貴省自身が東電と一緒になって問題を隠蔽し続けてきたことに関する事実を公表し、責任を明らかにすること。
3.貴省の責任者が出席した上で、即刻交渉に応じること。
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
福島老朽原発を考える会 代表:阪上 武
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
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時事通信が以下の記事を流しています。
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虚偽報告知りながら指示不徹底=市民団体が保安院批判
経済産業省原子力安全・保安院が昨年9月、原発の炉心隔壁(シュラウド)のひび割れについて各電力会社に点検を指示したことに関連し、「福島老朽原発を考える会」(阪上武代表)などの市民団体は5日、「米国の業界誌で東京電力の虚偽報告を知ったのに、徹底調査を命じなかったのは安全規制上、問題だ」とする平沼赳夫経産相あての抗議文を発表した。(時事通信)[9月5日23時4分更新]
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さて,9月3日の質問書の解答は,先ほど(9月6日夜)ようやく届きました。「本件記事に関して,昨年9月に当省から事実関係について東京電力に問い合わせたところ,東京電力からは同紙に記載されているような事実はない,との回答を得ております。」というものです。内容については,質問書を見て取材したマスコミが既に報じています。
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<東京電力>炉内隔壁のひび割れ、1年以上前から把握 米誌指摘
東京電力が福島第2原子力発電所3号機のシュラウド(炉内隔壁)の大規模なひび割れを4年間隠して運転していた問題で、昨年8月、米国の専門誌が「東電は少なくとも1年以上前から把握していた」と指摘し、経済産業省原子力安全・保安院の問い合わせに東電は「そういう事実はない」と回答していたことがわかった。(毎日新聞)[9月6日0時16分更新]
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読売新聞 (9月5日23:28)
福島原発シュラウドひび割れ、保安院が1年前から把握
東京電力が福島第2原子力発電所3号機(福島県)の炉心隔壁(シュラウド)のひび割れを昨年7月まで4年間隠していた問題で、経済産業省原子力安全・保安院がこの事実を昨年8月に米原子力総合雑誌で把握していたことが5日、わかった。この件について保安院は当時、東電側に確認を求めたが、否定されていた。当時の担当者は「対応が甘いと言われれば甘んじて受ける」と話している。 この雑誌は「ニュークレオニクスウイーク」2001年8月30日号。東電がシュラウドのひび割れについて、保安院に報告する1年以上前から事実を知っていたことを指摘する記事が情報源を明記しないまま掲載された。東電はこの1か月前の7月5日にひび割れ発見を保安院に報告しており、この記事の内容を確認するため保安院の担当者が東電に電話。だが「そんなことありません」と否定され、信用していた。
保安院はこのころ、内部告発のあった2件の疑惑について内偵調査を進めていたが、この中にはシュラウドのひび割れ情報はなく、それ以上追及しなかった。東電側の回答について保安院では「社内できちんと検討した結果だと思っていた」と弁明している。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これで,保安院は,内部告発の調査中の少なくとも2001年8月30日前後に,東電のひび割れ隠しを報じる情報を得ていたことが明らかになりました。電話したら否定されてそれを信じたというのは,とても内偵調査中の相手に対する態度とは思えませんよね。さて真相はいかに…。
シュラウドと保安院の罪5(02/09/17)
■保安院の「暫定的な調査結果」
保安院の13日付の「暫定的な調査結果」を先ほど手にいれて見ました。驚きを感じ,危機感を抱きました。時間のない方は<危機感>のほうだけでも読んで下さい。
■驚き
東電が隠していたひび割れの程度は深刻なものでした。
<福島第一原発2号機>
「1994年第14回定期検査(94.4〜95.1)が行われた際,東京電力からシュラウドの点検を受託したGE社は,H2,H3,H6及びH7の溶接線にひび割れの兆候を発見し,UT(超音波探傷試験)で確認したところ,H3近傍のひび割れはほぼ全周にわたっており,最大深さも50mmを超えるものであった。」
H3のひび割れは,国に報告され,公表されている事例ですがが,GE社の検査で深さが50mmを超えていたというのは初耳です。東電は,このひび割れの深さは最大40.8mmであると報告しています。この10mmの違いは一体何なんでしょう?。「1996年第15回定期検査(95.12〜96.4)が行われた際,…GE社の報告データによれば,H7近傍の全周にわたるひび割れは,最大深さが10mmを超えるなど成長していたことがうかがわれたが,発電所保修部門では対策は不要と判断し,追加的対策は講じなかった。」
なんとリング部以外に生じた全周におよぶひび割れを隠していたんですね。全周のひび割れを隠していたのはこれだけではありません。<福島第一原発3号機>です。
「1994年第14回定期検査(94.9〜95.2)が行われた際,東京電力からシュラウドの点検を受託したGE社は,H1,H2,H4,H6の溶接線にひび割れの兆候を発見し,発電所保修部門に報告した。UTで確認したところ,H6近傍のひび割れの兆候がほぼ全周にわたって観測された」そうな。
東電はこれを「ひび割れはないけど,予防保全のために交換する」と言って交換していましたリング部以外でひび割れがSUS316Lのシュラウドでもやはり見つかっていました。<柏崎刈羽原発1号機>ではH4に2本も(1994年と1997年)。
ところでこの号機については,「2002年5月から第12回定期検査(02.5〜02.6)が行われた際,東京電力はシュラウドの全溶接線の点検を行ったとしているが,結果については国として確認できていない。」とあるのが気になります。なぜ東電は全溶接線の点検を行ったのか?なぜ保安院はいまだにこの点検結果を確認しないのか???■危機感
保安院の暫定報告は一言で言うと「なんだ東電君,隠さずに言ってくれればよかったのに。心配しなくったって,軽い傷なら,修理なしでの運転をOKしていたのに。」というものです。この報告既には,維持基準を導入した上で,シュラウドのひび割れを放置したままの運転を強行するという危険なレールの上に乗っているように思います。
<福島第一原発2号機シュラウドの所見>
「1994年時点でのH7部分のひび割れの深さは,3mm以下と概ね検査の検出限界に近く,使用前検査に合格しない深さのものとはいえない。しかしながら,1996年には,H7近傍の全周にわたるひび割れは最も深いところで10mmを超えていたことから,シュラウド交換を行った1998年までの間は,電気事業法第39条(技術基準適合義務)を遵守していなかった可能性がある。」
ひび割れの有無を問題にしているのではなく,ひび割れの程度を問題にしている点に注目して下さい。深さ3mmのひび割れと深さ10mmのひび割れを区別し,前者は検査で合格させられるし,そのままの運転が認められるけど,後者はだめだよと。これぞまさしく維持基準ではないですか。<福島第一原発4号機シュラウドの所見>
「品質保証の観点からも,点検記録に単に「異常なし」と記録するのではなく,ひび割れの兆候の存在を認めた上で,判断理由を付して「異常なし」と記録すべきであったと言え,自主保安のあり方として適切ではない。」
これはどういうことでしょう?ひび割れがあったのなら「異常あり」のはずでは?ここにも,ひび割れがあっても安全上支障がないと判断されれば「異常なし」とし,そのまま放置して運転してもよいという「維持基準」の考え方があります。しかもそれを判断するのは電力会社のようです。電力会社にまかせるととんでもないことになるというのが,今回の事件の教訓のはずなのに…。
ひび割れた原発のひびを放置して運転できるようにする。これは明らかに基準の緩和であり,安全の切り売りです。前にも問題にした,安全評価の問題を再度掘り起こしながら,こうした動きになんとか歯止めを掛けていかなければと思います。>>>明日は保安院交渉です<<<参加希望される方はご連絡下さい>■東電二見常務の大ウソビデオ
ところで,昨日おもしろいビデオをみました。
クローズアップ現代の「原子炉解体」というもので,おそらく1997年12月の水曜日(何日かはわからなかった)放送のものです。シュラウドひび割れにともなうシュラウド交換がテーマになっています。
ここで東京電力の二見(現常務だと思います)氏がインタビューを受けています。彼はおそらく不正に深く関わっていたと思いますが,これが今見るとうそ八百です。ひとつは,シュラウド交換は,ひび割れがないものにも「予防保全」のために行うと言っていること。そしてもうひとつは,ひび割れはSUS304だけに起こるのだと言っていることです。福島第二原発3号機の平成9年度第8回定期検査はこの年の8月までに終わっており,この時にSUS316Lの全周に及ぶ例のひび割れが見つかっていたわけですから,この大嘘つき,ということになります。番組では,304が悪くて,316ならいいのだというのが,大きなコンセプトになっており,それを記者が必死で説明していますので,NHKもまんまと騙されたというものです。
シュラウドと保安院の罪6(02/09/28)
■中部電力に迫られる「究極の選択」
浜岡原発4号機のシュラウドひび割れは,下部リングのほぼ全周に及んでいました。SUS316Lの下部リングのひび割れは、福島第二原発3号機、柏崎刈羽原発3号機に続いてこれで「3周」目,これはこのタイプのシュラウドの構造的欠陥とも言えるのではないでしょうか。
今回の場合,注目すべき事は,昨年の定期検査時には異常なしと報告していた事実です。このことは,福島第二原発3号機のシュラウドひび割れを受けての保安院の点検指示への報告に,「平成13年度(第6回定検時)に点検を実施し結果,異常なし」とはっきりと記載されています。(現物は以下にあります。)
http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/pdf_files/h13.10.22.pdfここで中部電力は「究極の選択」を迫られることになります。
A.ひび割れが非常に急速に進展することを認めるのか
昨年の点検では異常がなかったというのであれば,全周に合わせて2.3m(超音波探傷検査によりさらに伸びる可能性があります。)にも及ぶひび割れが,わずか1年余りで成長したことになります。単独のひび割れは最大15cmです(中部電力のHPに図がありますが,見事な1本です)から,進展速度は1年間で片側75mmにもなります。これは,東電や保安院が「安全評価」で前提とした1年間で11mmを遙かに上回る数値です。中部電力は,浜岡原発運転禁止仮処分裁判において,応力腐食割れが直ちに原発の安全性に影響しないとの主張の根拠に,進展がゆっくりであることを挙げていますが,上記の事実はこれをもひっくり返すものといえます。
B.昨年の点検で見つけていたひび割れを隠蔽していたことを白状するか
新たな不正の発覚か!こちらは,国の点検指示に対して,わざわざ「異常なし」との回答をしているケースなので,「国への報告事項ではないと判断した」などというような言い逃れはできません。
さあどっちだ!■「安全評価」の破綻
中部電力がどちらを選択しようと,今回のひび割れ発見は,あらためて東電と保安院が行った安全評価の前提に問題があることを明らかにします。
繰り返しになりますが,東電と保安院の行った安全評価は,ひび割れを想定したら,それだけが1年間に片側11mmの速さで進展することを前提としています。ところが現実には,円周上に同時多発的に発生するひび割れが繋がり,1年間で11mmを遙かに超える速度で,成長を遂げるのです。・浜岡原発4号機の場合
A.昨年の点検がウソでないなら…1年間で2300mm
B.ウソを認めれば…運転開始10年で2300mm,それでも1年間で230mm以上・柏崎刈羽原発3号機の場合
運転開始9年で990mm,1年間で110mm以上
(※市民ネット補足;27日、3.2mと判明したので、年間356mm以上です、しかも別のひびも発覚!)
<東京電力>刈羽原発で新たなひび割れ兆候も 新潟
定期検査中の柏崎刈羽原発3号機(新潟県、沸騰水型、110万キロワット)のシュラウド(炉心隔壁)でひび割れが見つかった問題で、東京電力は27日、シュラウド最下部の「サポートリング」内側で、新たなひび割れの兆候が見つかったと発表した。内側の全周約15.7メートルのうち45センチを26日、水中カメラで調べたところ、調査範囲全体にひび割れの兆候が点在していたという。
また、既に見つかっていた「シュラウド下部リング」外側(全周約16.5メートル)に点在していたひび割れの長さは水中カメラで確認した部分で約1メートルだったが、超音波探傷検査の結果、約3.2メートルと分かった。 【小畑英介】(毎日新聞)[9月27日14時50分更新]・福島第二原発3号機の場合
2001年7月の段階でほぼ全周(16m=16000mm)。保安院の報告によると,7年前の定期検査時には,発見されていなかった。よって1年間で2300mm
なお,福島第二原発3号機については,2001年の段階でひび割れの深さが最大で26mmであったと報告されていますが,これが7年間で成長したとすると,最短でも10年以上かけて進展したとする東電の評価が覆ります。進展速度の評価は,深さについても再検証が求められるのではないでしょうか。■維持基準(欠陥評価基準)導入反対!
近藤委員会で10月1日に中間報告,次の臨時国会で制定か。
東電が不正をはたらいたのは,傷を報告すると検査や修理で原発を止めることを余儀なくされ,それがいやだったから。それを止めなくてもいいことにするというのですから,これは明らかに安全基準の緩和です。
これが導入されると,自由化と経済低迷の中にある電力が,安全を犠牲にしてのコストダウンに突っ走ることは目に見えていますし,保安院にこれを止めることができないことは明らかです。それに,ひび割れが起こらないはずの材料で,ひび割れが急速に次々と発生しているもとで,果たして基準をつくることなどできるのでしょうか?*************************************
毎日新聞ニュース速報
電力各社の原発トラブル隠しを受けて市民グループが呼びかけた抗議集会が24日、東京・霞が関の経済産業省前であった。隠ぺい告発を受けた同省(当時通産省)の原子力安全・保安院の調査が2年かかったことや、ひび割れがあっても程度に応じて運転継続を認める「維持基準」の導入に批判の声があがった。
集まった約10団体のメンバーは「ひび割れ放置の運転を許すな」などと書いた横断幕を手に、「まだ疑惑はたくさんあるはず。徹底した追及が必要だ」「すべての情報を公開して第三者が検証できるようにすべきだ」と訴えた。 【前田英司】[2002-09-24-22:45]