01 インフルエンザにタミフルはいつまで効くの?

乳幼児に抗インフルエンザウイルス剤タミフルを投与して熱が下がってもウイルスの排出が続き4〜7日目には約3割に耐性ウイルスが現れる結果がでました。タミフルの耐性はこれまで小児で5%、3歳以下でも10%,程度と見られていました。今回の研究では5歳以下の乳幼児が対象ですがインフルエンザに免疫のない赤ちゃんにタミフルを長く使うとかなりの効率で耐性が出る可能性があります。
通常のインフルエンザの治療を変えるという話ではありません。現時点では従来どおり5日投与でもよく,使用を制限する必要はないとしながらも、万一新型インフルエンザが流行した際には「一般成人や高齢者も含めて初めて罹り、抗体もなかなかできないので、熱が下がったところでタミフルの投与をやめた方が耐性の出現を低減するのではないか」と指摘されています。
2002/2003年のシーズンに3病院で、迅速キットによりインフルエンザと診断し、タミフルを5日投与した5歳以下の乳幼児33人を対象に、ウイルスの排出がどれくらい続くか調査した結果が以下のとおりです。その結果、投与後1〜2日で全員熱は下がりましたが喉からのウイルス排出は1週間〜10日続きました。そのうち27%は4〜7日目に耐性のインフルエンザウイルスが出現。
この耐性ウイルスが人から人へ感染するか、まだ確認されていませんがウイルスの二種のスパイクのうちHAの抗原構造には変異がなく、NAの変異が主体であることから、感染力が保たれている可能性が示唆されています。

「現時点では使用制限する必要ない」
 一菅谷憲夫けいゆう病院小児科部長−
新聞で「子どもの3割から耐性」と報道されたので大人もそうだと誤解されていますが、これはあくまでインフルエンザに罹つたことのない乳幼児の話。大人やインフルエンザに罹ったことのある学童は、耐性が出る前に免疫が効いてウイルスが消えてしまう。調査した乳幼児も皆治っており、重症化して入院という話ではない。我々の経験から、耐性ウイルスが周囲に罹って流行を繰り返すことはなく、ウイルスも1週間程度で自然に消える。MRSAなどとは全く違う。
乳幼児をタミフルで治療する場合は、こういうことがあることを念頭に置いて治療してもらえばいい。
現時点では従来通りの治療で問題なく、使用を制限する必要はないが、今後症例を増やし、3日投与と5日投与で症状を抑える力に差はないか、耐性が出る割合が適うか検討する必要がある。
今回の研究は、新型インフルエンザ対策につながる話。新型が出ると全国で患者は約3,000万人発生すると言われているが、一般成人や高齢者を含めて初めて握るので抗体がなかなかできず、ウイルスが1週間〜10日間排出される可能性がある。そういう時にタミフルを長く飲むと、日本中で各年齢層に非常に高率に耐性が出てくる可能性がある。したがって、新型の場合は5日投与ではなく3日投与くらいにした方がいいのではないかと考えている。もちろん、その方がより多くの人に使える。
新型インフルエンザの治療について、WHOはタミフルの5日投与を推奨している。タミフルでウイルス排出が減り、人にうつらなくなることを期待しているのだが、今回の研究結果から、これは誤りである可能性が強い。確かにタミフルで症状はよく取れるが、ウイルスがいなくなるのではない。