36 CRPの検査

体のどこかに炎症が起こったときに、炎症性物質によってCRPが作られます。このCRPの産生量は炎症の程度にある程度比例すると言われています。ところがCRPの本体は(主に)肝臓で作られる蛋白ですから、体のどこかに炎症があっても、血中CRPが上昇するまでは時間がかかります。少なくとも、炎症反応発生後、12時間以上で無いと血中CRPのデータはあてに出来ないと思います。発病すぐにはWBCの方があてになると思います。白血球は末梢にプールされたものが動員されて血中で増えるからで、CRPとは上昇する機序が違うからでしょう。
炎症が発生して12時間以上経つと、炎症の程度に比例して血中CRPが上昇しますが、ウイルス感染よりも細菌感染の方が組織障害が強く、炎症反応も激しいはずです。だからCRP産生量も多い。2病日でCRPが5.0以上もあるのであれば、炎症が始まった後急激にCRPが産生されたことを意味しますので、この炎症反応は生体にとっても危険なものと判断します。これも経験ですが24時間でCRPが5以上上昇するのは重篤な細菌感染であると思ってます。
その後いったん血中に放出されたCRPは半減期が24時間と長く、産生量が少なくとも炎症が続いていると血中に蓄積されます。だから炎症反応の弱いウイルス感染でも長引くと、蓄積されてCRPが上昇します。アデノの感染なんかでは、3〜5病日でCRPが10くらいまで上がる症例があると思います。
結局CRPの値で判断するのは、値そのものでなく、どのくらいのスピードでCRPが上昇したか、が最も大事だと思います。
問題は炎症の原因となる感染が、上気道に限局するものか、敗血症のように全身性のものかを見分けるのが困難であることです。小児科医では敗血症やそこから発展した化膿性髄膜炎なんかを経験されたことがありますが、敗血症の初期は全く元気です。しかしこの時期に抗生物質を投与しないと間に合わない。この病初期の判断がものすごく難しいです。
難しいからこそ、「発熱がウイルス感染か細菌感染か、見分けるなんて不可能だ。」とおっしゃり、軒並み抗生物質を投与される先生もおられます。それはそれで良いと思うのですが、ここ2〜3年で、迅速検査が発達したこと、末血・CRPが外来で手軽に測定できるようになった事、、、色々な医療設備が充実してきたからこそ、この見極めをして、できるだけ無駄な投薬を防ごう、その結果耐性菌の発生が減ったり、医療費が減ったり、様々なメリットが出てくると思うんです。
感冒に抗生物質を出さない、その方針を実践するのは簡単です。しかし、感冒症状の患者の中から重症感染をピックアップするのは困難です。この方法をちゃんと考えずに安易に抗生物質投与を止めるのは、非常に危険な事だと思います。