肺炎球菌感染症:肺炎球菌群と記載しましたが、肺炎球菌は いろいろのタイプがあり、細菌の表面にある構造(莢膜多糖体)によって約90種類に分類されています。私たちの鼻やノドに常在する病原性の弱いタイプもありますが、一部のタイプでは強い病原性を持つものもあります。
肺炎球菌群は、成人(高齢者)肺炎の起炎菌として有名です。しかし、子供の場合は髄膜炎や敗血症を合併しやすく、生命をおびやかしたり、将来的な脳機能の障害を招来します。
特に、5歳未満の小児にとって、肺炎球菌群は 細菌性髄膜炎の起炎菌として、大変重要な細菌です。肺炎球菌群の中でも、特に小児に感染症を起こしやすい 7種類のタイプをまとめてワクチンにした製剤が、PREVENARです。欧米では、5歳未満を対象とした公的予防接種が普及しています。 肺炎球菌感染症では、髄膜炎や敗血症など重症感染症のみならず、上気道炎や中耳炎の起炎菌としても、日常診療で良く認められるな重要な細菌です。重症感染症を予防するためにも、感冒や中耳炎によるお子様の負担を軽減するためにも、肺炎球菌ワクチンによる感染予防は有用な手段のひとつです。



日本でも、2010年2月より接種できるようになりました。
注意:現在日本で発売されている高齢者の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)は、この小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー:PCV)とは全く違うものです。詳しくは成人用肺炎球菌ワクチンのページを参照して下さい。

予防するVPD
小児の肺炎球菌感染症(細菌性髄膜炎など)
接種時期と接種回数
普通は生後2か月から、4週(中27日)以上の間隔で3回、1歳を過ぎたら(12-15か月)4回目を接種します。

接種開始の年齢

接種回数

接種スケジュール

生後2か月〜6か月

4回

1回目から4週(中27日)以上の間隔で2回目
2回目から4週(中27日)以上の間隔で3回目
生後12-15か月に4回目

生後7か月〜1歳未満

3回

1回目から4週(中27日)以上の間隔で2回目
12-15か月に3回目

1歳

2回

1回目から60日以上の間隔で2回目

2〜9歳

1回

1回のみ

お勧めの接種スケジュール
2か月の誕生日から開始して、4週(中27日)間隔で3回受け、1歳を過ぎたら追加接種を1回受けます。できれば、2か月でヒブワクチンと同時接種で開始して、3か月からはヒブワクチン、三種混合(DPT)ワクチンとの同時接種で7か月までに最初の3回接種が終わると早く抗体(免疫)ができるので、より望ましいものです。
3本同時接種については、小児科医と相談してください。
ワクチンの効果と安全性
小児肺炎球菌ワクチンは世界の100カ国以上で承認され、すでに45カ国で定期接種に導入されているワクチンです。ヒブワクチンと同時接種をすることで、細菌性髄膜炎予防に非常に有効です。極めて安全性が高く、効果が高いワクチンですので、一日も早い定期接種化が望まれます。
このワクチンもWHO(世界保健機関)が最重要ワクチンの一つとして、低開発国を含めてすべての国で、国の定期接種にすべきだと勧告しているものです。病気が重いだけでなく、早期診断が難しいので、受けられる年齢になったらすぐに接種します。
小児用肺炎球菌ワクチンの高齢者への予防効果
小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)は、子どもの肺炎球菌感染症の予防だけでなく、間接的な効果として、高齢者の肺炎球菌感染症予防に効果的なことがわかっています。多くの子どもにこのプレベナーを接種すると、肺炎球菌感染症の感染機会が減少し、結果的に高齢者の細菌性肺炎など(主な原因が肺炎球菌)が減ります。
そのために、WHOも子どもでのプレベナーの接種率を上げることを推奨しています。また、現在のところ高齢者も含めて成人にプレベナーの接種は認められていません。米国では近い将来子どもだけでなく、成人にも使用できるプレベナーの改良型(7種類の肺炎球菌から13種類に増やしたもの:PCV13)が発売になる見込みです。日本では治験をしているところです。

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