36 細菌性髄膜炎とワクチン

細菌性髄膜炎には3種類のワクチンがある。
@インフルエンザ樺菌b型[Hib]性髄膜炎〔Hemophillus innuenzab
アメリカでは20年前から、その他の先進諸国でも1015年くらい前から広く接種されてきている。目本では抗生剤の発達が海外に比べて顕著であり、抗生剤による化学療法に重点が置かれてきた節がある。小児医療の進歩により早期発見早期治療は進んできているが、近年抗生剤に耐性の菌が増えてきており、Hibワクチンヘの関心が急速に高まってきていた。遅ればせながら5年ほど前から治験が始まり、2007年1月26目に認可が下りたものの、ワクチンはフランスの工場で、わざわざ目本向けに作られているので生産が遅々として進まず、目本の厳しい基準に合わせる努力が続けられ、20081219目ようやく発売にこぎ着けたという経緯がある。それも任意接種であるために新生児の30%程度の需要と考えて準備されているに過ぎない。月に約78万本〔年間約100万本〕が輸入されている。新生児は月に約8万人生まれ、その30%に3回分と考えて、需要を7.2万本と計算している。今後順次増産が期待でき、将来的には年間3400万本が輸人され安定供給が予定されている。その頃(約12年後)を目途に目本でも定期接種化が予定されている。次に述べる乳児用の肺炎球菌ワクチンと、DPTワクチンに不活化のポリオワクチンを合わせた4種混合とともに新しい定期接種として位置づけられることのなりそうである。あくまで予防接種医の期待を込めた予想に過ぎないが。いくつかの地域で公費負担が計圃され、または1部で既に始まっているが、ワクチンが手に入らない状況での公費負担化はいたずらにワクチン不足を助長するだけで、現状ではあまり意味がない。公費負担があれば接種したいというのではなく、ぜひ接種したいという人を優先的に接種すべきと考える。部分的な公費負担を考えても良いが(もちろん接種希望者には朗報であるが)、そのために優先的にワクチンを供給するように迫るのは筋違いであることをよく理解してほしい。しかも対象は生後2ヵ月から6か月までの、またはせいぜい1歳未満の乳児を対象に考えるべきである。1歳過ぎの幼児は積極的な公費負担の対象からは外してもいいのではないかと考える。このワクチンは公費負担で賄うワクチンではなく、定期接種を積極的に考えるワクチンである。公費負担化を優先すべきワクチンは高齢者の肺炎球菌ワクチンや幼児のおたふくかぜワクチン・水痘ワクチンである。

なおHibワクチンは、通常DPT3種混合ワクチンと同時に接種するワクチンである。

A肺炎球菌性髄膜炎[乳幼児用7価肺炎球菌ワクチン(PCV7)]〔Prevenar

 このワクチンも海外では10年ほど前から実用化され、Hibと共に乳幼児の細菌性髄膜炎の抑制に貢献している優秀なワクチンである。わが国でもすでに治験が終わり申請も進み、今度中には認可され実用化が予定されている。このワクチンもHibと同様に一刻も早い定期接種化が望まれるワクチンである。接種対象はHibと同じであるが多少は幼児期にも有効なワクチンである。海外では、DPTやポリオ、そしてHib同時に接種されている。

現在13価や10価の新しい肺炎球菌ワクチンの治験が進められている。

B髄膜炎菌性髄膜炎〔Meningococcal meningitis 本来の細菌性髄膜炎であり目本では現在ほとんど発症する人はいない。イスラム諸国では度々流行している。イスラム諸国への渡航やアメリカの大学に留学する際には要求される。巡礼に参加される方やアメリカの大学に留学される方は是非接種していってほしい。