08 放射能放射線関連 

一番大事な事から記載しますと、基本的には大丈夫です。
一度体内に取り込まれた放射性ヨウ素はどうなるかというと、血中に移行し、10〜30%は甲状腺に蓄積されます。蓄積される量は食べ物などから既に取り込んだ放射性でないヨウ素の摂取量に左右されます。甲状腺に取り込まれたヨウ素は少しずつ体外に排出されるし放射線を出す能力は放射性ヨウ素131の場合は約8日で半分に減る。さらに80日目には千分の1以下になります。

「放射性物質」が放出するのが「放射線」? 

<「放射性物質」と「放射線」を混同しないように>

「爆発とともに飛んできたり、海水に流れ込んだのが、『放射性物質(ヨウ素131、セシウム137
など)』、人体に影響をあたえるのは、放射性物質のだす『放射線』」

○放射性物質―「放射線」を出す物質
○放射能----------放射性物質が放射線を出す能力
○放射線---------放射線物質が「粒子線」と「電磁波の総称」

< 学校で習うこと >
・この世のすべての物質は「原子」から作られている
・原子には「陽子」と「中性子」でできた原子核があり、その周囲を電子がまわっている。
・「同位体」:通常、陽子と中性子の数が決まっているが、中性子の数が違っているのがある。
(12Cと13Cなど)
・「放射性同位体(ラジオアイソトープ)」
不安定な原子は余分なもの(放射線)を出して安定な形になろうとする。

例)ヨウ素131(原子核131・・陽子53中性子78)構造が不安定なことから、安定したキセノン131に
変化するとき放射線を発生する。つまり、放射性物質は延々と放射線を出し続けるわけでなく、
放射線を出した後は、安定した物質へと変化する。

【 放射線の種類と防ぐ方法 】
@ α(アルファ)線(原子核がアルファ崩壊するときに放出)
・遮蔽方法:紙一枚でできる
・でやすい放射物質:プロトニウム
・健康被害など:放出する物質が体内に摂取された時(体内被曝)。

A β(ベータ)線 ( 原子核がベータ崩壊するときに放出)
・遮蔽方法 :アルミニウムなど (遮蔽によりでるX線には鉛等)
・でやすい放射物質 :ヨウ素131、セシウム137
・健康被害など:主な健康影響が生じるのは体内に取り込まれた場合。

B γ(ガンマ)線 (α崩壊・β崩壊後に原子核にエネルギーが残っていれば放出)

・遮蔽方法:鉛・鉄の板
・健康被害など:x線と同様、人体の深部まで透過する。

C 中性子線 (核分裂時に放出)
・遮蔽方法 : 鉛・鉄は通過します。水・コンクリートで遮蔽。
・でやすい放射物質 :ウラニウムやプルトニウム
・健康被害 など: ガンマ線よりも中性子の方が人体に重度の障害を引き起こしやすい。


【 原子炉事故で出てくる主な放射性物質 】
●放射性物質にも、いろいろある、
・拡散しやすい「気体」になりやすいものが、われわれの身近に飛んでくる
 (風下にある地域に多く飛び、空気よりも重く地表に落ちてくる)

○放射性キセノン133 (半減期 5.3日)
・核分裂によって 発生する放射性希ガスでベータ崩壊する。核爆発の有無を確認する指標として用いる。

○ヨウ素131(半減期 8.7日)
・通常ヨウ素127より中性子が4つ多く不安定で、β崩壊で安定になろうとする。
・成長をつかさどる甲状腺に取り込みやすい、184度でガスになるので原発事故でよく出てくる

○放射性クリプトン85(半減期 10.76年)
・クリプトン85は放射性のクリプトンで、自然界にはほとんど存在せず、原発の使用済み燃料の再処理によって生成される。放出されるのは主にβ線、わずかにγ線。

○セシウム137(半減期30.07年)
・必須ミネラルであるカリウムに似た性質で体内に吸収されやすく、体中に分配され、ベータ線による内部被ばくを起こす。排尿などで排出される量も多い。湿度計、密度計、流量計などの工業用計器にも使われている。

○ストロンチウム90(半減期28.8年)
・カルシウムと似た性質を持ち、人体に入ると骨に沈着し、骨髄腫や造血器に障害を引き起こす恐れがある。宇宙船、無人気象ステーションおよび航行用ブイの動作用エネルギー源の原子力電池して応用が進められている。

○プロトニウム239(半減期 2.41万年)
・プルトニウムは放射性崩壊によってアルファ線を放出するため、体内、特に肺に蓄積されると強い発癌性を示す。プルトニウムは核兵器の原料や、プルサーマル発電におけるMOX燃料として主に使用される。

※半減期とはその物質が半分になる時間、
 (半減期1時間はとする100のものが1時間後50、2時間25、3時間後12.5・・)

※プルサーマルとは
・プルトニウムのプルとサーマルニュートロン・リアクター(熱中性子炉)のサーマルを繋げた和製英語
・原子力発電に使われるウラン235の廃棄物として核兵器に使わる「プロトニウム239」が発生する。ウランは天然資源で限りはあるが、プロトニウムはどんどん増えていく。そのプロトニウムにウランに混ぜてMOX燃料として再利用する発電がプルサーマル。


【 放射線はなぜ危険 】
○もともと、自然界には、少量の放射線が存在する。
・自然放射線(大気・大地に含まれる放射性物質が呼吸・食事などで体内に取り込まれる)
・・年間:2.4ミリシーベルト、(ブラジルには10ミリシーベルト)

・人口放射線(医療用に使われるレントゲンなどで使われるX線)・・6.9ミリシーベルト。

→自然にあるものと人口のもので危険に差がない

●大量の放射線は、人間の細胞を傷つけていろいろな病気を引き起こす。
(ガン・白血病などの悪性腫瘍、遺伝病、脱毛、受胎能力の減退)
・人間には修復能力があり、それを超えた量を浴びると病気になる。

(1)短時間に大量の放射線を浴びる場合(確定的な影響)
・‘86年のチェルノブイル事故で30数名の作業者が死亡
・‘99年の東海村JCO臨界事故で作業員2名死亡・・など
→現時点では“原発などの現場にいない限りは”心配しなくて大丈夫と思われる。

(2)低いレベルの放射線を長時間浴びて一定時間をへて発生(確率的な影響)
@悪性腫瘍(がん・白血病)
A遺伝子異常:(※ショウジョウバエの実験より)

 <広島・長崎での被爆者への調査>
(「放射線影響研究所(放影研)」被爆者9万4千人と、そうでない2万7千人を生涯にわたり追跡調査。)
・癌に関しては自然発生する場合と明らかに差がでるのは、一度に“200マイクロシーベルト”以上浴びた場合。
・遺伝的影響は確認されていない。
○ただし、発達途中の子供は、お酒・たばこと同様に、放射能の影響を多く受ける可能性が多いので、大人よりも注意が必要。
<関連した用語>
○アポトーシス:傷ついた細胞、成長の途中でいらなくなった細胞を排除する人間の本来持った機能。がん化した細胞はほとんどこの能力で取り除かれている。
○ホルミニスト効果:ごく微量の放射線が健康の増進につながる。
          ラドン温泉など・・現在、研究途中。

【 なぜ、食べ物・水に基準をもうけるか?】
・原子力発電所で作業する人以外は「外部被曝」の危険は少ない。
・水・食物、傷口などから取り込まれた「放射性物質(ヨウ素131、セシウム137)」 が体内(甲状腺など)にとどまり、体外に出るまでに放射線を出し続ける「内部被曝」を防ぐ必要がある。(放射性物質は、崩壊して少なくなっていくうえに、排泄によって体外に出されるので、たまり続けるというわけでない。)

(注;被“爆”―原子爆弾など核兵器の被害。
被“曝”―人体が放射線にさらされること 。)

【 「ベクレル」と「シーベルト」との違い 】

『 野菜から、2、2000ベクレルのヨウ素131が検出された。 』

○「ベクレル(Bq:物質が放射線をだす量)」
・1秒間に1個の核分裂がおきると1ベクレル。
例)100ベクレルの計測された水道水
 =1秒間に100個の原子が崩壊するだけの放射性物質が含まれる。

『 日本人は、年間3.75ミリシーベルトの放射線を浴びている。』

○「シーベルト(Sv;実際に人体に与える影響)」
・シーベルト(Sv) = 放射能濃度(Bq/kg) × 実効線量係数(Sv/Bq)× 摂取量(kg)

● 実効線量係数(Sv/Bq)―放射性物質ごとに吸収経路(経口・吸収)の違いによってきまっている
例)“経口摂取”の場合
ヨウ素131 は 2.2×10-8 (0.000000022)
セシウム137 は 1.3×10-8 
プルトニウム238 は 2.3×10-7
(実効線量係数は年齢などにより異なる。)

※ミリシーベルト、マイクロシーベルトの混同に注意。
1シーベルト
=1,000ミリシーベルト
=1,000,000マイクロシーベルト(100万)