10 ポリオ不活化の当院の対応

2012年9月1日から、ポリオワクチンが大幅に変更になり、基本的には内服型から注射型に変わります。
なお注射型のワクチンも、ポリオが流行した場合、早期に免疫ができますので、まだ製品としては残ります。
簡単に言いますと、これまで公費のポリオは内服型、自費のポリオは注射型ですが
世界的には注射型のポリオが普通のワクチンですので、注射型が公費。内服型が自費になります。
取り急ぎ、9月からは単独不活化ワクチンの注射型が主体となり、11月には今までの3種混合にポリオを
加えて、4種混合になります。

9月からの単独不活性化ワクチン導入にむけて
ポリオワクチン接種が済んでいない方へ

1.ポリオワクチンをまだ1回も済んでいないお子様
  不活性化ワクチンを合計4回受けて下さい(初回3回+追加接種1回)

2.生ポリオワクチンをすでに1回受けているお子様
  生ポリオ1回済んでいる方は合計3回の不活性化ワクチンを受けて下さい

3.不活性化ワクチン1〜3回受けているお子様
  不活性化ワクチンが合計4回となるよう残りの回数を受けて下さい
  (今まで国内未承認の不活性化ワクチンを接種されている方も、
   不足分を9月から定期接種として受けられます)

4.生ポリオワクチンをすでに2回受けているお子様
  不活性化ワクチンは一生必要ありません(終世免疫がついています)


標準的な初回接種の接種年齢は生後3か月から12か月です
なお、不活性化単独ワクチンを接種された方はその後に導入予定されている、
4種混合(DPT+ポリオ不活性化ワクチン)は接種できませんのでご注意下さい

ポリオの予防接種には、病原性を弱めたポリオウイルスをシロップに混ぜて飲む生ワクチンと、死んだウイルスを含む溶液を注射する不活化ワクチンの2種類があります。生ワクチンは弱いながらもウイルスが生きているので、まれに接種後にポリオを発症し、まひが残ることがあります。

これに対し不活化ワクチンはその心配がありませんが、ワクチンですから何万人かに一人は副反応もあります。世界では不活化ワクチンが標準ですが、日本は生ワクチンを定期接種(公費負担)に使っています。これは昭和30年代にポリオが流行した際、当時共産圏であったソ連から生ワクチンのポリオを緊急輸入した経緯もあるからです。

不活化ワクチンを接種する場合、現状では公費負担にはなりません。海外から取り寄せている医療機関を探すしかなく、計4回の接種で約2万円の自己負担が必要になります。しかも健康被害が起きても、国の補償はありません。哀しい事に医療機関に対して訴訟を起こし、それから輸入代行会社と保障の提案を受ける事になります。

万が一、まひが起こると怖いと考え、不活化ワクチンの接種を決める人もいますが、副反応の対応もよくお考えになり決めてください。

早く、全国どこでも不活化ワクチンを安心して接種できるようになってほしいのですが、平成24年秋を目標に準備をしています。

国産の不活化ワクチンは製薬企業が開発中で、近日中にも承認申請し、厚生労働省は審査を急ぎ、導入は次の秋の見込みです。安全性や有効性の確認をおろそかにできないのは当然の事です。

患者団体は承認までの間、海外の不活化ワクチンの緊急輸入を要望していまする。厚生労働省は「緊急輸入は病気が流行して防ぐ手段がない時の特例措置。ポリオは流行しておらず、生ワクチンの予防効果も高い」と応じない考えは当然です。緊急輸入をすれば、どこかの国が困るであろうという発想がまったくないのは困ったものです。

まひへの恐れから今春の全国の生ワクチン接種率は昨春より18%も落ちています。自費で不活化ワクチンを接種した人と、導入を待つ人の両方がいるとみられていますが、現在中国でポリオが流行し、死者が3名おります。免疫のない子どもが増えるのは危険です。不活化ワクチン導入までは生ワクチンの接種をしてほしいと思います。

日本小児科学会は「何も接種しない選択が最も良くない」とし、生か不活化のいずれかのワクチン接種を勧める声明を出しています。