Q7  母親が卵を食べると、母乳を飲んだ乳児に湿疹ができるって本当?

A: 牛乳を飲むと母乳中に牛乳成分が出てきます。ピーナッツを食べると母乳中に出てきます。卵や牛乳などの蛋白質を含む食品を摂食した場合に、その蛋白質が完全に分解されないで消化管から吸収され血液中に入るということについてはかなり一般に認められています。とくに風邪などにより胃腸粘膜が弱っている場合には粘膜からの蛋白質の吸収が亢進し、食事性の蕁麻疹がたいへん発症しやすくなっています。しかし、そのように血液中に入った蛋白質の量は極めて微量であります。母乳中に含まれる蛋白質は乳腺細胞により新たに合成されたものであり、微量な食事性の蛋白質が母乳に移行するということは少ないのですが、ないことはありません。
乳幼児では検査で食事抗原により陽性反応を示す頻度が高いのですが、現在はアトピー性皮膚炎の原因を食事単独に求めることはありませんが、小児科医は食事制限をお勧めすることが多く、皮膚科医は厳密な食事制限を指導することもありません。
生後2〜3ヶ月の乳児に認められる強い湿疹形成の主な理由は、乳児において急速に形成されつつある腸内細菌叢から産生される内毒素の影響と考えられています。母体内で無菌的に発育した胎児は、生後種々の細菌に暴露され、消化管内で急速に増殖を始めます。この消化管内の細菌が種々の毒素を産生するために乳児に湿疹が形成されるのです。
ピーナッツアレルギーの赤ちゃんは始めてピーナッツに暴露された時にアレルギーを示すそうです。この感作はいつ成立したのかという疑問で母乳を調査し,母乳中にピーナッツ抗原が出ていることをつきとめた報告です。これまでこのように母乳中に分泌されることが分かっていた蛋白は、
牛ベータラクトグロブリン:摂取1-6時間後、濃度5-800ng/ml。ovalbumin:摂取2-6時間後、濃度0.2-6ng/ml。
ovomucoid:摂取2-6時間後、濃度0-2.88ng/ml。小麦gliadin:摂取2-4時間後、濃度5-95ng/ml。
ピーナッツ抗原は長い間母乳中分泌が証明されなかったそうです。
健康な、母乳哺育中の女性23例で、50gのピーナッツを食べてもらって、その後1時間毎に母乳を採取した報告です。母乳中にピーナッツ蛋白と主要ピーナッツアレルゲンであるArah1、Arah2を検出しました。
ピーナッツ蛋白は11/23例で陽性、10/11例ではピーナッツ摂取後2時間以内に陽性となりました。残り1例は6時間後に陽性となりました。頂値中央値は222ng/ml(範囲120-430ng/ml)。Arah1,Arah2とも検出されました。母乳が感作の経路と考えらました。
蛋白ではありませんが母乳中に分泌される重要な食物にアルコールがあり、お酒を飲んだ母親の母乳で乳児がいい気分になる可能性があります。