Q22 子供にステロイドを使うのが心配です。

A: 塗り薬なら、まず安心。炎症のある間だけ、小児科医の指示に従って使います。ステロイドは、炎症を抑える作用がある「副腎皮質ホルモン」と同じはたらきをする薬です。効果が高く、いろいろな病気に有効な反面、副作用が他の薬に比べて多いのも事実です。しかし、アトピー性皮膚炎の治療で塗り薬として用いている場合、重大な副作用が起きることはまずありませんし、処方する医師も副作用が出ないように、よく注意をしています。ステロイドの全身的な副作用としては、顔がむくんで丸くなる、身長の伸びが停止する、などがありますが、これは飲み薬や注射で摂取したときにのみ、起こりうる症状です。普通の塗り薬の使用量でおきる場合はないといってよいでしょう。塗り薬で起こりやすい副作用は、毛細血管の拡張、多毛、皮膚が薄くなるなどです。しかし、これらは、数ヶ月以上使い続けた場合に起こるのが普通で、使用を止めれば、必ずもとにもどってきます。また、まれに、症状がひどいために、やむを得ず、塗り薬を長期にわたって多く使用せざるを得ない子供さんがいますが、この場合、使用を急に中止すると、ステロイド離脱症状が起きることがあります。これは、皮膚炎の悪化はもちろんですが、悪寒や発熱、ショック症状を伴うため、危険な状態に陥ることもありますので、決して自己判断で、使用を中止しないことです。中止する場合は、必ず、医師の判断のもとで、徐々に行うことが大切です。小児科医がステロイドを処方するのは、「湿疹ができる」→「かゆくて掻く」→「症状が悪化する」という悪循環を断ち切るため。普通は、症状が出ていないときにも常用する薬ではありません。ふだんは、なるべく保湿によるスキンケアを実行しましょう。つまり、ステロイドの塗り薬は、皮膚科医の説明をよく聞いて、正しく使うことが大切なのです。ステロイドは、薬効によって5段階に分かれていますが、炎症の程度や、顔や手足などといった部位によっても、強さの違う薬を処方することがあります。また、ステロイドを恐れて医師に相談せずに勝手に使用を止めたりすると、リバウンドで症状をより悪化させ、かえって多量に使うことになる場合もあります。医師の指示に従って正しい使い方をすれば、むやみに心配する必要のない薬です。また、最近では「プロトピック軟膏」という新薬も使用許可が下りました。ステロイドと同等の効果がありますが、副作用が少ないので注目されています。日本では、現在は、15歳以下の使用は許可されていませんが、近い将来、使用できるようになるでしょう。ステロイドは正式には副腎皮質ホルモンといい、本来生体で産生されているホルモンの一種です。ステロイドは、もともと人間の体の中で産生されているものですので、非常に危険な薬剤とではありません。誤った使用法をしたり、安易に使用を中断した場合は一時的にもともとの症状が増悪することがあります。しかしこのようなリバウンド現象は血圧の薬であれ糖尿病の薬であれ、ある程度の効果のある薬剤を不適切に使用した場合には必ず認められることであり、適切な使用法を行えば生じないことです。ステロイドの副作用が問題となったのは、顔面に長期間塗り続けたさいの副作用が強いことによります。むしろステロイド以外の薬剤の方が、かぶれなどの副作用を生じることがあります。さらにアトピー性皮膚炎のような慢性の湿疹の場合には、病気を放置しておくことの方が薬剤による副作用よりも辛い思いをされると思います。
ステロイドは強い薬ですが適正な使用法を行えばけして危険な薬ではありません。病気をきちんと治すことの方がずっと重要なのです。