Q48:血液検査のIgEとアレルギーの関係は?

A: アレルギーの検査として、小児科では、RAST(ラスト)という血液検査を、皮膚科では、プリックテスト・スクラッチテストの皮膚反応検査が行われます。結果は異なることもあるのですが、両方ともB細胞というリンパ球が抗原(アレルギーの原因物質)に対抗するために作られた抗体というものの量を測定している検査です。 但し、この検査結果が100%信用できるものではないのです。この検査で本当はアレルギーでないのにアレルギーと判定されることや、逆にアレルギーなのに正常と判定されることがあります。「うちの子はアトピー性皮膚炎ですが、血液では何も反応が出ませんでした。原因不明なのですか。」とか、「うちの子は健康なのに、たまたま調べた検査で卵アレルギーが分かりました。除去しないといけないのですか,という質問を受けます。こんな質問が来るのはこれらの検査が曖昧だからです。この検査を100%信用すると誤診してしまいます。 どうしてこんな検査の間違いが生じるのでしょうか。先ず、見かけ上のアレルギーが治ってしまっても、数年は抗体反応が残ることが確認されています。ですから、抗体が見つかっても実際は過去の話かもしれないのです。
 第二に、乳児の場合、アレルギーを持っていても抗体を作る力が未熟なため、血液では反応が出ないこともあります。ですから、検査で陰性でも、アレルギーがないとは言えません。
 第三に、血液検査などはリンパ球のB細胞の反応を見ているのですが、アレルギーはB細胞だけで起こるのではないことが、最近になって分かってきました。T細胞という別のリンパ球も抗原(アレルギーの原因物質)に反応するのです。ところが、このT細胞を検査してみると、卵アレルギーにも関わらず、通常の検査では卵の反応が出なかった患者さんからも、ちゃんと反応が出ることが確認されているのです。
 傾向として、抗原が体の中に入って1時間以内に生じるアレルギー反応(即時反応)はB細胞が、それ以降、じわりじわりと生じてくる遅れたアレルギー反応(遅延反応)はT細胞が関与しています。ですから、アナフィラキシー(嘔吐や呼吸困難などを生じるアレルギー性ショック)や蕁麻疹、喘息などの即時反応が主体のアレルギーは通常の血液検査で判定が可能な場合もありますが、アトピー性皮膚炎などの遅延反応が主体と考えられているアレルギーは通常の検査では分かりません。
 B細胞にアレルギーの抗体を作らす犯人はT細胞です。ですから、現在行われている血液検査は、真犯人ではなく、その子分を捜しているみたいなものなのです。子分がいないからといって、親分である真犯人がいないとは限りません。現在行われているアレルギー検査は、参考程度と考えて下さい。