8 麻疹(はしか)

麻しんウイルスの飛沫感染によって起こる病気です。伝染力が強く、重い病気です。発熱、せき、鼻汁、めやに、発しんを主症状とします。最初3〜4日間は38℃前後の熱で、一時おさまりかけたかと思うとまた39〜40℃の高熱と発しんが出てきます。高熱は3〜4日で解熱しますが、発疹は全身に出て、しばらく色素沈着が残ります。
主な合併症としては、気管支炎、肺炎、中耳炎、脳炎があります。患者100人中、中耳炎は7〜9人、肺炎は1〜6人に合併します。脳炎は2,000〜3,000人に1人の割合で発生がみられます。また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という慢性に経過する脳炎は約10万例に1例発生します。また麻しん(はしか)にかかった人1,000人に5人の割合で死亡します。わが国では現在でも年間約50人の子がはしかで命を落しています。
予防接種では、これらの重い合併症はほとんどみられません。ぜひ予防接種を受けましょう。
1歳から2歳の間にかかる子が多くなっています。1歳のお誕生日に受けるように努めましょう。遅くなった場合でも保育園、幼稚園などの集団生活に入るまでは、必ず受けておきましょう。
東京や大阪では、はしかは常に流行していますので、1歳前に保育園に入園させる場合には、10ヵ月頃に麻しん(はしか)ワクチンを任意で受けることをおすすめします。その場合お母さんからの免疫の影響でつきが悪い子もありますので、定期接種と同じときに、もう一度受けてください。
このワクチンは弱毒生ワクチンですからウイルスが増えるため、接種して1週後から発熱や発しんなど、軽い麻しん(はしか)に似た症状が約10%の人に出ます。通常は1〜2日で消失します。
現在、成人麻疹の発症が問題になっています。麻疹ワクチンの既往があってもなくても、現在、麻疹感受性者が20代から40代に蓄積しており、そこにウィルスの暴露があれば流行が起きうる可能性が大です。少子・高齢化で日本の人口分布が変わり、疾病の変化が起きています。成人の麻疹はなかなか診断がつかず(成人に麻疹はないという既成概念が診断を遅らせる原因でもあるそうです)、薬疹とフォローされていて最終的に麻疹と診断される事例があります。診断までのあいだに時間がかかり、周囲にばらまくことも成人麻疹の問題点です。麻疹ワクチンの接種率は70ー80%と言われていますので、5人に2名は未接種者と考えて、お母さんでも未接種者には接種をお勧めします。
なお、麻疹ワクチンが無料になったのは、1978年からです。逆にいうと、それ以前に生まれた方は麻疹の抗体がない場合もありえます。