10 日本脳炎

日本脳炎ウイルスの感染でおこります。ヒトからヒトの直接の感染ではなく、ブタの中で増えたウイルスが蚊(コガタアカイエカ)によって媒介されます。7〜10日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐(おうと)、意識障害、けいれんなどの症状を示す急性脳炎になります。 流行は西日本が中心になりますが、病気は北海道などを除く日本全体に分布しています。この地域で飼育されているブタでの流行は毎年6月からはじまり10月まで続きますが、この間に80%以上のブタが感染します。好発年齢は60歳を中心とした成人と5才未満の幼児です。以前には小児、学童に好発していましたが、予防接種の普及で減っていると思われます。
感染者のうち1,000〜5,000人に1人が脳炎を発症します。脳炎のほか無菌性髄膜炎や、あまり症状が出ず、夏かぜ様の症状で終わる人もあります。脳炎にかかったときの死亡率は約15%ですが、神経の後遺症を残す人が約50%あります。ぜひ予防接種を受けておきましょう。
日本脳炎ウイルスを殺し(不活化)、精製したものです。副反応としては2日以内に37.5℃以上の発熱が接種を受けた者100人中1人以下にみられます。注射局所の発赤、腫脹も接種を受けた者100人中1〜3人以下です。発しんや圧痛もまれにみられます。
基本的に予防接種の必要性を考えるときにその条件は
  1;罹患、発病したら根本的治療がない(予後に保証がない)
  2;発病したら致命率が高い
  3;多くの人が罹患し、致命率が高い
  4;後遺症を残すことが多い
  5;大勢の人がかかり社会生活が麻痺する
  6;ワクチンがある
  7;予防接種が安全で有効という前提がある

 日本脳炎はかつては1−5全てがあてはまっていました。現在は1,2,4は変わりませんが、3に関しては日本国内ではその様相がまったく様変わりしています。日本脳炎発生患者数が日本国内で激減してきた理由に関しては
 水田数の現象→蚊が少なくなった、
 環境・生活の変化→蚊に刺される機会の現象
 栄養状態、健康水準の上昇→感染防御力の増進
などの要因も考えられていますが、大きな理由はやはり予防接種の効果でしょう。日本では実感が薄れていますが、東南アジア諸国ではまだまだ何万人、10万人以上の人が罹患し命を落としています、そして日本脳炎のワクチン接種を勧めると効果がでることも検証されています。
 厚生労働省では毎年、豚の抗体保有状況を調べていますが、ウィルスの汚染はあるという現実があります。日本脳炎はたとえ感染しても基本的には不顕性感染(25人から1000人に一人の発病)といわれています。一人一人の感染・発病を予防するのに現在のところワクチン以外にありません。