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V 東電報告書の欺瞞    データを示さず安全を強調

MOXの作り方 MOXの作り方

 東京電力は、高浜での疑惑暴露を機に、独自の調査を行い、その結果を報告しました。柏崎日報に二度にわたって掲載された広告がその報告です。しかし、その内容たるや、高浜で明らかにされた疑惑を柏崎で隠すためには、どのように発表内容を限定し、データを加工したらいいのかだけを考えたような内容で、私たちが、調査内容をみて安心できるようなものではありませんでした。調査結果の公表のやり方、内容に私たちは、不審感をつのらさざるを得ません。 以下その詳細です。

 

 決定的に少ない東京電力の発表資料

 東京電力の報告書には、具体的なデータはほとんど何も書かれていません。そのため、事実を解明するために決定的にデータが不足しています。しかも、いくら市民団体が要求しても、これ以上のデータを示そうとはしていません。関西電力と比較すると、その姿勢は異様で、絶対にデ−タねつ造のシッポはつかませないという姿勢が見て取れます。これまでズットそうであったように、市民に物事を知らしめず、安全だと繰り返すことで押し切ってしまおうという姿勢がここにも出ています。そこには、安全確保に対する根本的な姿勢に問題があるといわざるを得ません。事実を隠し、耳障りのいい甘い言葉で市民を煙に巻いてしまおうという姿勢、そのことが東電報告書の決定的な問題点です。

 

 不正を覆い隠すデータの「加工」−ベルゴ社・東電のヒストグラム−

 東電報告書には、ロットごとの外径測定データの「ヒストグラム(棒グラフ)」が付録にあり、これが唯一のデータらしきものです。しかし、以下の2点でグラフが加工されています。

東電のヒストグラム

グラフの加工@ 外径検査の抜き取りの単位は本来、ブレンダーですが、付録のデータは、製造ロットごとのものになっています。ロットはいくつかのブレンダーを含み、まとめたデータではブレンダー個々のデータの不正が、隠されてわかりにくくなります。

グラフの加工A 外径の測定精度は1000分の1mmです。しかし、付録の「ヒストグラム」は1000分の4mm単位にまとめてあります。これも不自然なデーターを自然な形にします。

上記2点のグラフの「加工」がベルゴ社において不正があったのかどうかを、データの分布の異常から推測するのを困難にしています。(次項参照)

 なぜデータをロットごとにまとめ、1000分の4ミリ単位にして分析が困難になるようにしたのか、という問に対して、東電は納得できる説明はせず、1000分の1mm単位のデータも公開していません。

 

 不正を隠す東電の発表グラフ   −BNFL社・関電のデータとの比較−

 BNFL社(高浜)で市民団体により明らかにされた、データねつ造を、東電報告書からは解明できないように加工してあることを示しています。

図1 高浜、もとのデータ(1000分の1mm刻み)

図1

図2 刻みを1000分の4mmにまとめたグラフ

図2

図3 東電報告書の1000分の4mm刻みのグラフ

図3

 上の図1示したのは、BNFL社で製造された高浜4号炉用MOX燃料のあるロットの外径測定データの分布をグラフにしたもので、全数測定データの分布が、山が1つの形状であるのに対し、品質管理の抜き取り検査データの分布が、山が2つの不自然な形をしていることがわかります。これは抜き取り検査データに、本来あるべき分布とは別の分布のデータがコピーされた(データをねつ造した)ために起こったことです。

 図1の太い線(高浜での抜き取り検査のデータ)は、1000分の1mm刻みで示されていますが、図2はそれを東電報告書と同じに1000分の4mm刻みに加工してみたものです。見事に、山ひとつのきれいなグラフになりました(データねつ造は判らなくなりました)。

 一方、図3は東電報告書のグラフで、1000分の4mmにまとめられ、山はひとつです。 わざわざ1000分の4mm刻みにした理由を東電は説明していません。

 このP824というロットは、関電は「不正なし」と主張していましたが、市民団体がグラフの異常を根拠に、抜き取り検査に不正があったと主張し、最終的にデータでっち上げが明らかになったものです。

 BNFL社で発覚した不正に対応した調査がなされていない

 東電のMOX燃料の品質管理状況についての再調査は、そもそもBNFL社での関電用MOX燃料の製造に際しての不正が明らかになったことを受けてのものです。東電の報告書ではBNFL社で当時発覚していた、"検査データをコピーし、流用して実際には検査を行わなかった"という点でのみ“調査”がされており、検査データが後から書き換え可能であったかどうかについて述べています。
しかし、今年3月になってBNFL社で、製造と品質管理において新たに以下の2つの不正が発覚しました

 BNFL社で発覚したこの二つの新たな不正についても、それがデータの分布の異常となってはっきりと表われています。

 高浜原発用MOX燃料製造について新たに明らかになった二つの不正について少し説明しましょう。

不正な操作@ 「植木鉢型」の形状をしたペレットを合格させるために、上中下の3点を測定する全数計測の測定点を操作し、中央部付近だけで計測するよう測定装置を操作していた。

P829全数と抜取 左図はP829というロットの全数計測データの分布と抜き取り検査データの分布です。抜き取り検査データの分布が、全数測定データの分布に比べて全体的に右の方、すなわち数値の大きい方にずれています。他のロットにも同様の傾向が現われており、この傾向については関電も9月付の中間報告で指摘しています。この原因が「植木鉢型」ペレットを通すために測定点を操作したためと推測されます。

全数計測では…中央部だけを測るという不正で「植木鉢型」ペレットを円筒形に見せかけ無理矢理合格させていました。

植木鉢型ペレット

抜き取り検査では … 広がった一方も測った上で平均値を取っていたため全数計測の平均値よりも必然的に値が大きくなった。

不正な操作A 品質管理の抜き取り検査において、外径の計測時に仕様値をわずかに超えるものがある場合に、これを90度回転させて計測し直していた。

検査員は、仕様値よりわずかに大きいペレットを通すために、90度回転し、正確には楕円形をしたペレットの短い直径を測定し直す、という不正を行っていました。検査データの分布をよく見ると、仕様限界値の大きい方のすぐ内側に異常なピークが存在しますが、これがその不正によるものと思われます。

これら2点の新たな不正についての調査がなされていない

 新たに発覚した不正は昨年に発覚したものとは質的に異なるものである。東電はこの新たな不正発覚に対応した調査を行っていません。

ペレットの形状異常や測定時の不正の有無を確認するためのデータは、東電側の要求で行われた品質管理検査データも、東電の立会検査時のデータも一切公開されていません。

イラスト(定規)

 正規分布との比較に見る東電のヒストグラムの異常
 東電の抜き取り検査での抜き取り数は32個(以上)と、関電と比べても非常に少ないのですが、東電のヒストグラムには、平均値と標準偏差が記されているので、正規分布(あるべき分布)との比較は可能です。ところがよく見ると、抜き取り検査結果が中央付近に集中する傾向が多くの製造ロットで見られます。このことは、検査員が仕様の中央付近の値が出たときに3回スイッチを踏んでデータを送るなどの不正があったことを疑わせるものです。不正がなかったかどうかは、元のデータを東電が出せば明らかになることです。

 規格に従わない抜き取り検査

 品質管理検査における抜き取り数、判定基準については、東電2月報告書に「MIL−STD−105Dに基づいて設定した」との記述がある。しかし、実際には少なくとも以下の3点について、MILスタンダード(米軍規格)とは異なる検査が行われていたことが明らかになっています。

@ 抜き取り検査で調べる抜き取り個数が一定していない

 東電によると、検査ロット=ブレンダーごと抜き取りは、各号機の最初の3ブレンダーについては80個以上、その他は32個以上とし、ブレンダーによって何種類かの抜き取り数を用いていました。これは決まった抜き取り数を求める規格とは明らかに異なる点です。東電はその意味を知りながら、そして柏崎市長は訳もわからず「多い分には問題ない」などとしています。しかし、抜き取り数は、製品全体の精度がどのくらいと考えられるから、抜き取り検査をを何個すれば何%の信頼性で他のペレットが規格を満たしていると考えられるかというような、数学的理論をもって決められるものではないでしょうか。規格をはずれて抜き取り数を変更するなどということは許されないことです。なぜ抜き取り数をブレンダーによって変えるのか、誰が何を基準にそれぞれのブレンダーについての抜き取り数を決めていたのかについても一切明らかになっていません。製造ロットごとのブレンダー数、ブレンダーごとの抜き取りペレット数も一切明らかにされておらず、後者については通産省ですら承知していない状態です。

A 不合格後の切替え手順に違反

 ベルゴ社ではMILスタンダードの抜き取り規格のうち、約7000個のペレットを含む1ブレンダーから32個(以上)を抜き取り、1つでも仕様外のペレットがあった場合には、そのブレンダーを不合格にする判定(0・1判定)が適用されていました。これは抜き取り数が少ない「ゆるい検査」の条件です。規格では「ゆるい検査」を行っているときに、1つでも不合格のブレンダーが存在した場合には、それ以降の検査を「なみ検査」(80個の抜き取りが必要となる)に切替えなければならないとされています。 しかしベルゴ社は、柏崎用MOX燃料の抜き取り検査において、不合格となったブレンダーが存在したにもかかわらず、その後の検査を「なみ検査」に切替えていません。これは明らかに規格違反です。

B はじめから「ゆるい検査」

 規格に従えば、検査のはじめは「なみ検査」で、これの合格が続くとはじめて「ゆるい検査」に移行できます。「ゆるい検査」に移行するためには、少なくとも10ブレンダーが連続して合格する必要があるとされています。はじめから「ゆるい検査」を適用し、多めの抜き取りを最初の3ブレンダーでやめたベルゴ社の場合、明らかにこれに従っていません。これも規格違反です。
 以上の点はJISの抜き取り規格に完全に従ったBNFL社−関電とも際立って異なる点です。こうした点を問いただすと、東電・通産省は「規格に完全に従ったわけではなく、規格に基づいて当事者間(東電・東芝とベルゴ社)で協議をして決めたやり方に従ったもので、このやり方が守られていれば問題はない」と主張しています。しかし、これを安全審査書や品質保証に照らして検討した場合、以下の2点について大いに問題があると思われます。

(1) JIS規格に準拠することを要求している安全審査書に抵触する

 柏崎刈羽原発の原子炉設置許可申請書では、準拠すべき規格として「日本工業規格(JIS)」を挙げています。しかし、ベルゴ社−東電が「基づいた」とするのはMILスタンダードで、申請書の中には挙げられていません。規格に違反するようなやり方を、別に事業者と製造会社間で勝手に定めて運用していたことは、安全審査書に明らかに抵触していると言わざるを得ません。

(2) 規格を根拠にして品質水準が保証されるとは言えない

 東電は2月報告書において、「抜き取り検査はAQL(合格品質水準)0.15%に相当」すると述べています。しかしここで言う「合格品質水準」は、規格に記載されている数値です。規格に違反するような抜き取り方法を行っていたベルゴ社−東電の場合には、規格を根拠にして品質水準がどうだという主張は全く意味がありません。

イラスト(バインダー)

 不合格ブレンダーの扱い

 東電によると、柏崎刈羽原発用MOX燃料で存在した不合格ブレンダーは、含まれていたペレットが再び全数計測にかけられた後、再検査が許され合格していたということです。不合格になったものを再検査して合格にするなら、一体なんのための検査なのでしょうか。

 全数計測記録の保存について

 通産省はこれまで全数計測記録については、上書きされて消去されるので存在しないとの説明を行ってきました。しかし東電は、全数記録は打ち出されており、社内文書である「レーザー計測装置認定報告書」の基礎資料となっていることを明言は避けながらも証言しています。全数計測記録は保存されていながら、それが隠されているのではないかという疑いが大きいのです。

イラスト(探偵)

 AVIとベルゴ社とは密接な関係があり「第三者機関」とはいえない

 東電が第三者機関として検証を依頼したAVI社は、そもそもはベルギー国立研究所(SCK/CEN)が発生母体である。ベルギー国立研究所は認証会社COPAPROを設立し、COPAPROは後に別の認証会社AVN社と合併するが、そのAVN社はAVI社の原子力部門である。一方でベルギー国立研究所(SCK/CEN)はベルゴニュークリア社に50%の出資をしており、東電のMOX燃料の品質管理検査においても、プルトニウム富化度の検査に関わる検査(同位体組成の検査)の依頼を受けていた組織である。AVIはベルゴ社と関係があり、「第三者機関」とはとてもいえない。東電はこうした事実を明らかにしていない。AVIがベルゴ社にとって「第三者機関」であるとはとても言えず、AVIによる認証をもって客観的なチェックを受けたとはとてもいえない。

 重大事故のリスクを高める「プルトニウムスポット」の検査は十分でない

 「プルトニウムスポット」と呼ばれるプルトニウムの偏り(ペレットの一部分にプルトニウムが不均一に存在する)は、部分的な高温や核反応の増加により、被覆管を破り、燃料損傷に至る可能性があります。重大な事故のリスクを増大させ、安全上重要な問題です。ウランとプルトニウムの酸化物を細かく砕いて混ぜ合わせるのが粉体技術ですが、専門家によるとこれには限界があり、さらにベルゴ社で用いられている粉体、混合技術はBNFL社と比較しても古く、劣るものであるということです。つまり、均一にウランとプルトニウムが混ぜ合わされたペレットを作る事は、技術的に非常に難しいということです。しかも、これを検査するには、出来たペレットをスライスに切って調べる必要がありますが、柏崎刈羽原発用で総数41万個のペレットに対して、わずか36ペレット、36データしかやっていません。この点は、あまり大きく扱われておりませんが、専門家は危惧している点です。

イラスト(プルトニウムスポット)

 データの非公開は許されない    何もデータが示されていない報告書

 原子力の問題では、公開ということが重要視されてきました。原子力基本法の中でもそのことがうたわれております。しかるに、東京電力はこのたびの報告書で、データを出さないことについて「個々の検査データはベルゴ社のものなので、公開できない」と述べています。データを公開できないような会社と契約すること自体が問題ですし、ベルゴ社にデータを要求するのは、発注者である東電の当然の権利であり、義務ではないでしょうか。
 東電2月報告書は100ページ近くのものです。しかし、柏崎刈羽原発用のMOX燃料に関する数値はほとんどありません。ほかには、製造工程の色々な規格、抜き取り検査の方法、製品の合格の基準、ベルゴ社の取引先とか、MOX燃料の過去の製造量など、いわば外堀の話ばかりで、実際のデータらしきものはほとんどありません。わずかに、添付資料として、ペレットの大きさのグラフだけが示されていますが、加工されたグラフのために、事実を知るのが困難になっている事は先に述べたとおりです。数値としてのデータが全くといっていいほど記載されていない東電報告は、数十ページに亘ってびっしりと生データを公開した関西電力に比べても異様なものです。

 住民を軽視している東電報告書に、市長や村長は不満を表明すべきである

 そしてこの章の最後に一言。この東電報告書の内容や、このような報告書で事を収めようという、東電の姿勢に、私たちは柏崎刈羽住民として、非常に不満を感じますし、東京電力の柏崎刈羽住民に対するある種の蔑視すら感じます。そして、市民、村民の立場に立つべき市長、村長や行政当局は、この全く無内容な東電報告の内容を、これでよしとして受け入れるのではなく、事実を把握するという立場から、もっとシッカリと監視して頂きたいという心境です。

この章の内容は、一部、ふくろうの会(福島老朽原発を考える会)のホームページを参考にさせて頂きました。


W  次世代のエネルギーへ   新エネルギーが原発を不要にする