1.膝の伸展機構のスポーツ障害

Sinding-Larsen-Johansson病(SLJ病)・Osgood-Schlatter病(OS病)

成長期における頻度の高い膝のスポーツ障害です

 

1.成因

膝伸展機構は膝蓋骨、膝蓋靱帯、脛骨粗面から構成されていますが、スポーツ活動により大腿四頭筋からの過剰な牽引ストレスを受け、膝蓋骨下端、脛骨粗面に軟骨障害を生ずる。それぞれ、Sinding-Larsen-Johansson病(ラルセン病)、Osgood-Schlatter病(オスグットシュラッター病)と言われています。運動中、運動後の痛みで始まることが多く、障害が進行すると階段昇降等の日常生活にも支障を来すようになります。オスグットシュラッター病では脛骨粗面の突出、発赤、局所熱感を障害の増悪時に認めますが、ラルセン病では痛みとレントゲン所見が決めてとなります。いずれも同様な進行過程をたどり、透亮像を示す初期、病巣内に分離、分節像を示す進行期、母床より隔絶された骨片を形成する終末期の病態を示します。

2.治療

1)安静

やはり運動による、力を入れるという外力が原因ですので、原因治療として運動量を減らす等の安静処置が必要となります。程度がひどいとギプスが必要なこともあります。

2)装具治療オスグットシュラッター病では、膝蓋靱帯を圧迫して脛骨粗面にかかる張力を軽減するベルトの装着が役立ちます。

3)投薬・物理治療

消炎鎮痛薬を内服する事もあります。また温熱治療・低周波刺激により血流増加、筋肉のリラクゼーションをはかることも症状軽快に向けて有効です。

4)アイシング

局所の熱感が有るときはアイシングして炎症を落ち着かせることも必要です。

5)柔軟性・ストレッチ

大腿四頭筋(太股前面の筋肉)の柔軟性が低いと膝蓋骨周囲にかかる張力も高くなり痛みも当然出やすくなります。大腿四頭筋のストレッチを行うことが必要です。

3.予後

通常は上記の治療により数ヶ月で症状は改善します。しかし十分な安静が保てないと痛みが中途半端に持続したり成長期が過ぎて、成人しても痛みが持続することがあります。ですからスポーツと治療をどうバランスさせてゆくかが一番大事なところで、場合によっては痛みが多少あるのを承知で治療と平行してスポーツも程々に行い、悪化していないかどうか定期的にレントゲンで確認してゆくこともあります。とにかく一番大事なのは成長期終了後も痛みが持続しない用にしてゆくことです。スポーツは心身の健康のために行うものです。健康を害しないように適切な運動法と運動量の設定がこの疾患の予防と治療に最も大事なことです。

 

参考・引用NEW MOOK整形外科 スポーツ障害75-77