骨粗鬆症の治療


8.骨粗鬆症の薬物治療

1).ホルモン治療

エストロゲン

女性ホルモンであるエストロゲンが補充される治療法であり、骨折の予防効果もあると言われていますが、すでに閉経した女性に生理が起こったり、時として子宮癌、乳癌の発生の原因になることがあります。

カルシトニン製剤

カルシトニン製剤の注射は、これを20単位ずつ1から2週間に一回ずつ定期的に注射するわけです、この薬は破骨細胞を抑制して骨吸収を押さえるように働きます。この薬のもう一つの特徴は鎮痛効果も持っていることで同時に骨粗鬆症の痛みに対する治療にもなることです。

2).ビタミン治療

活性型ビタミンD3

これを骨粗鬆症の人に6ヶ月飲んでもらうと骨折の頻度が明らかに低下することがわかっています。しかしこの薬の効果は永続的ではなく内服をやめるとまた6ヶ月で骨折のしやすさが元に戻ってしまうといわれています。ですから飲み始めたらやめない方がよいのですが実際のところそこまで持続できるかどうか難しいところです。

ビタミンK2

ビタミンK2も骨粗鬆用の治療薬として出現しましたが実際での使用期間が短く、効果の方の確認はまだよくなされていないところですが、しばらく使われた感触ではあまり効果は無いとの報告も見受けられます。

3).その他

エビスタ 女性ホルモン用作用を持ちますが、乳癌などの発生を抑えた物です。ただし血栓症を起こしやすくなる可能性が有りますが、日本人では少ないようです。内服に特に気を配る必要は有りません
ビスフォスソネート製剤

ボナロン・ベネット・フォッサマグ・アクトネルなどの製品が有ります。骨吸収(骨をとかす)を抑制し、骨粗鬆症の特効薬といわれます。しかし、起床後すぐ空腹時に内服し、内服後30分は水以外口に出来ないなど取り扱いが少し難しいところが有ります。内服後すぐ横になると食道炎になることがあります。今の所と一番おすすめの薬です。

9.骨粗鬆症の家庭での注意

 1).心構え

 骨粗髭症に対しては原因が1〜2つに限定できないにもかかわらず、そのすべての原因をつぶすようには薬を飲んだりはしないで1,2種類の薬剤しか与薬していないこと、運動や日常の活動性低下が発病の原因として大きな比重を占めていると考えられますが、運動ばかりは自分が体を動かさなくてはならず、運動したことと同じ効果を持つ薬なんて物もないことから、日常生活指導は本疾恵の治療に際して大きな役割を担います。このことから、骨の量を増加させ、骨折の可能性を低下させるための根治療法には先程お話しした薬物療法と日常生活での本人の注意を車の両輪のようにして働かせる必要があると言うことです。骨の構成成分の1つであり、食べ物からの摂収量が不足しがちなカルシウムを多く摂る食事療法、ビタミンDを増やす日光浴、そして骨にカルシウムを結合させる運動の3つが、骨を強くする日常生活の3原則となります。
 日本における成人の1日のカルシウム所要量は600mgですが、ここ20年間以上に及ぶ国民のカルシウム摂取量は所要量の90%前後と低迷を続けており、平成8年にやっと94%になったばかりです。今後とも、カルシウム含有量の多い牛乳・乳製品や海産物、緑黄色野菜の摂取が望ましく、現在の食事に 100mg,200mgのカルシウム摂取量を増やすだけでも効果の上がります。
 腸管における吸収率は平均30%前後と利用効率の悪い栄養素、カルシウムを積極的にに吸収させるにはビタミンDが必要不可欠です。したがって、もう一度いいますが日光浴により皮下脂肪に蓄積されているビタミンDの前駆体、7一デヒドロコレステロールをビタミンD、、コレカルシフェロールに変化させることは体内にカルシウムを取り込ませ、また骨形成を促す、上で有用なのです。特に高齢になってきますとただでさえカルシウムの腸からの吸収能力が低下してきますので特に重要になります。このことを何回もいうのは運動しようがカルシウムを多く摂ろうがホルモン注射をしようがとにかく口から摂ったカルシウムが体の中に吸収されてこないことにはなにも始まらないからです。骨に対する荷重は骨内血流を増やし、骨芽細胞の活性化に役立つことから、運動、ないし日常の活動性維持向上は骨粗鬆症治療にも、また予防にも有効であると言われます、骨量のみでなく、骨梁形成・増加に運動が有効というより必須であることが最近の検査法の進歩でわかってきています。散歩やゲートボールなど低強度な運動でも骨の量の維持増大に役立つことが確認されおり、またアメリカからの報告では平均53歳の女性に1日平均25分運動してもらったところ1年後には運動していない女性に対して全身のカルシウム量が5%も増えていたということでした。今まで車で移動していたところを歩きにしたり自転車に乗ってみたりするだけでも、長期的には予防効果が上がります。エレベーターも当然使う必要はありません。お金払ってサークルやジムに行って運動するまでもなく日常生活で楽している部分を見直すだけで十分運動量は上がりますしエコロジーの風潮にもぴったりです。なんぎくてやだ、と言う人もいるかもしれません、既に立派な骨粗鬆症で膝や腰がに痛くなって十分動けないという人もいるでしょうそのレベルの人たちにはまず直ぐに骨を鍛えようとせず情けなくなった骨を支えようとして疲れ果てた筋肉を鍛え直すことから始めることをお勧めします。特に大事なのは腹筋、背筋、大腿四頭筋と言われるモモの筋肉です。痛みは背骨や関節に重さがかかっているときに出やすいのでねっころがってやりましょう。四つん這いになって猫がのびをするような動作で背筋を鍛え、仰向けになって自分のおへそをのぞき込むよう首を持ち上げたりかかとを浮かせたりして腹筋も鍛えましょう。ももは足上げなんかで始めると良いでしょう。筋力が快復してくると痛みも軽減し始めます。さあみなさんがんばりましょう。既に寝たきりになってしまっている人はその人その人で状況が大きく違いますのでプロに相談しなくてはなりません。

 しかしこれから年をとっていく人たちはこのようにしていれば予防になりますが、すでに立派な骨粗鬆症になっている方達は今までの注意を払ってゆくのは当然として骨の量のさらなる減少を押さえて、転倒の危険を減らすために、さらに家庭内では段差を減らす(敷居の段差、こたつや他の電気器具のコードを部屋の真ん中に走らせない、本なんか放り出しておかない)。階段をさけトイレに近い部屋の配置にしてもらう。場合によっては高齢者は夜間トイレに行く頻度が高いので寝室にポータブルトイレを用意しておく、家全体をいすで生活できるように習慣つけてゆく、廊下に手すりを使う、格好なんか二の次にして杖なども有効に使用することなども必要です。大事なことを忘れていました。孫の教育です。孫とぶつかって転倒したり、乗られて骨折したりするお年寄りもいますから。

 何と言っても今挙げたような注意や改造は、普段からやっておいてその代わりに家のお年寄りの骨折が防げれば経済的にも心理的にもかえって安い物ですよ。おそらくお年寄りの面倒を見ている人たちもその家でお年寄りになるんですから自分のためでも有るんじゃないでしょうか。