ヒット商品で高校も活況に

部活動から「地域版デュアル」へ [#i11b89c1]


水産高校の生徒が、部活動多で製造した魚醤が大ヒット。

 糸魚川市にある新潟県立海洋高校の生徒が、地元で上がった魚を加工した商品を、開発から製造、商品管理、
出荷まで携わるフンーフードカンパニー能水商店」。
もともとは同校食品科学コースの課題研究で製造した水産加工品を、地元のイベントなどで販売していたものが好評を博し、
これが部活動(食品研究部)へと発展。
同校同窓会の「能水会」が運営母体となって財務会計を行い、平成28年には糸魚川市から補助金を受けて専用工場を開設。
高校生は学業と並行して放課後、週末に活動している。
現在の部員数は7人。売上げの中から、学生たちにはアルバイト代が支払われている。

 ここで製造される魚醤「最後の一滴」は、地元の能生川を遡上してきた鮭から絞るエキスで作られる。
この魚醤をベースにポン酢「うおぽん」、めんつゆ「うおつゆ」なども開発された。
現在ではイオングループの基幹店や原信など大手小売りでも扱われるようになった。

2016年の実績では、3500尾の鮭を資源活用し3万本の魚醤製品を製造販売した。
「最近では学生たちの意識も高くなり、キャリア教育、アントレプレナー育成にも役立っています。
水産流通の仕組みや、商品開発十付加価値というマーケティングの基礎を学べることも大きいのでは」
(部活の顧問を務める松本将史教諭)

 同校はそれまで毎年定貝割れが続き、他校との統合までささやかれる時期が長かったが、
能水商店の活動が様々なメディアで取り上げられ話題になり知名度も上昇。
高校の魅力が発信され、遠隔地からの入学者が大きく増加した(2016年には定員80人中34入が遠隔地入学者)。
地元の交流人目拡大にも寄与している。

 存続が危ぶまれたほどの高校が活況を取り戻したことが県にも評価され、
15億円をかけて実習用の新造船(平成31年完成)が造られるほどになった。

 この「地元資源の活用」→「高校生による製造販売」→「高校の魅力発信」→「地元の交流人目増加」と
いう仕組みづくりが高く評価され、「グッドデザイン賞」や農水省「ディスカバー農山漁村の宝」など
数々の賞に輝いている。

能水商店の活動.png
週末や土曜日を利用し、能水商店の活動に勤しむ海洋高校の生徒たち(左端が松本将史教諭)

「ゆくゆくはこの活動が、糸魚川の地域振興につながって欲しいと考えます」と話す松本教諭は
「糸魚川版デュアルシステムの構築」を提唱している。

「デュアルシステム」はドイツ文化圏で生まれた徒弟制度に基づく職業教育システム。
日本の「定時制教育」と異なり、週の半分を学校、もう半分を企業で職務(実習)に従事する。
日本でも文科省が「日本版デュアルシステム」という、近隣企業への継続的なインターンシップによる産業教育を提唱しているが
「糸魚川版デュアルシステム」ではキャリア教育を地域振興に結び付けている。

最後の一滴.png

好評を博した鮭魚醤「最後の一滴」
少子化のあおりで志願者数減となっている地方の実業高校にも画期的なモデルケースとなるのではないか。


添付ファイル: file能水商店の活動.png 26件 [詳細] file 34件 [詳細] file 37件 [詳細] file最後の一滴.png 79件 [詳細]

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Last-modified: 2022-06-03 (金) 19:20:54 by pukiwiki 1.5.4